研究課題/領域番号 |
18K15341
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
鹿内 友美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 訪問研究員 (40783527)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サプライズ / 脳波 / 偶発記憶 / オッドボール課題 / 聴覚記憶 |
研究実績の概要 |
画像や音などの刺激が連続的に提示される中から、後から参照する可能性の高い特定の物だけを記憶したい。刺激の並べ順の工夫によって、覚えやすいもの・覚えにくいものを制御することはできないだろうか?先行研究から、刺激提示の1-0.8秒前のシータ波(4-7 Hz)の振幅と、刺激提示後のアルファー波とベータ波(8-30 Hz)の振幅・位相の変化が記憶しやすさに影響を与えることが知られている。本研究では、刺激の並べ順によって学習効率を上げられるかを検証するため、記憶する(符号化)時の刺激提示順によって生じる神経応答と、記憶テスト(1つ刺激が提示されるたびに聞き覚えがあるかを解答する再認)の成績の関係を検証する。 連続的に刺激を受ける状況では、刺激の特徴が変化したタイミングで顕著な神経応答が見られることが知られている。そこで、符号化時の脳波を計測し、刺激系列の中で、よく記憶される刺激と、あまり記憶されない刺激の特徴を比較する。また、刺激の特徴の変化による神経応答を予測する数理モデルを用いて、記憶テストの成績と、記憶に関連する脳活動の変化の予測を目指す。 これまでに、20名の脳波計測実験を実施し、脳波データおよび記憶課題時の行動データの解析を進めてきた。特に脳波データの解析では、筋電由来と思われる高周波ノイズの除去を加えることにより、より詳細な脳活動を観察できる状況となっている。また、これまでに実施した実験だけでは検証できていない条件について、追加実験を実施する、もしくはオープンデータベースなどの活用により示唆を得られないかの検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、感染症予防策が十分に検討されたため、脳波計測実験が再開されたが、多くの研究プロジェクトで同時に延期していた実験が再開されたため、実験環境の不足により追加実験を進めることが困難であった。脳波と行動データの解析を入念に進め、場合によりオープンデータの活用などを視野に入れて、追加実験を加えずに研究プロジェクトを完遂する方向性を模索することとなった。そのため論文執筆に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
新規に解析した脳波、行動データを加えて論文執筆を完成し、投稿する。査読時に指摘が想定される点については、引き続き、追加実験の可能性とオープンデータを用いた対策の両面から検討を継続する。追加実験の場合、現在保有するデータを計測した実験環境が解体済みのため、異なる環境下での計測となる。計測環境が異なると、脳波信号に含まれるバックグラウンドノイズや、計測装置の違いによる計測ノイズに違いが生じる。そのため、オープンデータを利用した場合と同様に、完全に異なる実験として分けて解析することになる。補足的なデータとして活用可能なオープンデータ、もしくは類似研究を実施する研究者からデータ提供を受けられないかを十分に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年に実験が困難であったため、昨年度は実験室利用が集中し、予定していた追加実験の実施ができなかったため、実験消耗品の購入がほとんどなく、また、論文投稿にも遅れが生じたため。論文掲載にかかる費用(投稿料、掲載料、オープンアクセス化費用、英文校正費)として使用する。
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