多様な道具を使用できることはヒトの際立った機能であるが、その神経基盤には未だに明らかでない点が残る。研究代表者のこれまでの研究から、ヒト脳では道具の「操作」と道具使用の「目的」は別々の脳部位で表象されていると示唆されている。本研究ではこの道具使用の二側面が脳内で独立して表象されていることを検証するため、近年認知神経科学的研究で盛んに用いられる表象類似度解析を道具認識中の脳活動に対して行った。その結果、文化の違いに関わらず、道具使用の「目的」は「操作」の情報とは独立に側頭前部領域に表象されていることが示された。本研究によって当該脳領域で道具の高次な情報表現がなされていることが初めて実証された。
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