研究課題
本年度は、感染症の蔓延と東京都立大学のMRI故障の影響により、予定していた介入実験が困難となった。その代替策として、一定期間に渡り片麻痺動作の代替的な経験である模倣動作を介入実験が困難となった。その代替策として、一回のfMRI実験の中で片麻痺動作の代替経験動作として、麻痺手の動きを模倣する条件を設定し、麻痺動作を観察するだけの条件、非麻痺手動作を模倣する条件、非麻痺手動作を観察する条件と比較検討を行った。実験の流れとして、上記の各条件を実施した後に、麻痺条件であれば麻痺手を、非麻痺条件であれば非麻痺手の動きを観察してもらい、その直後に各手の動きの困難性に対しての心理的評価を口頭でLikart scale(7point)に基づき回答してもらった。脳活動の解析に際して、ヒトの脳活動の特徴をより詳細に検討できる機械学習解析である、Multivoxel Pattern Analysisを実施した。この解析により、単純な脳活動の増減ではなく、脳活動の詳細なパターンの検討が可能となった。心理的な困難性の評価結果は、麻痺手を模倣した条件において、他の条件よりも優位にその困難性を理解していることが示された。また脳活動では、麻痺手動作を模倣した条件において、麻痺動作観察時の、他者の心を理解する際に活動するMentalizing networkや、他者の動きの理解に関わるMirror Neuron Systemにおいて、他の条件よりも特徴的な活動パターンが示されていた。これらのことから、片麻痺動作の困難性を理解するにあたり、その代替経験として、麻痺動作を模倣することが効果的であることが、心理的にも神経活動の観点からも明らかになった。本年度は昨年度実施した本実験の前段階の実験成果が、国際誌Biological Psychologyに掲載された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Biological Psychology
巻: 157 ページ: 107972
10.1016/j.biopsycho.2020.107972
Brain and cognition
巻: 146 ページ: 105632
10.1016/j.bandc.2020.105632