レビー小体病(Lewy body disease: LBD)は、認知症を引き起こすレビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies: DLB)と運動異常を引き起こすパーキンソン病(Parkinson’sdisease: PD)をふくむ神経難病であり、その病理学的な特徴であるレビー小体の主成分はαシヌクレイン(α-Syn)である。単量体α-Synは重合して多量体を形成し、神経毒性を発揮する。多量体α-Synは凝集してfibril(Lewy body)を形成し、時間とともに神経回路を介して中枢神経に伝播することが知られている。認知機能低下/運動症状等の発症期には、すでに中脳黒質ドパミン神経、脳幹部アセチルコリン神経を含む中枢神経細胞死がすでに高度に進行しており、α-Synの凝集と伝播を抑制する早期のα-Syn修飾治療介入が望まれる。LBDの前駆症状として、REM睡眠行動異常(REM sleep behavior disorder :RBD)は疾患特異性が高い表現系であるが、RBDと脳内のα-Syn病理進展との関連は明らかではない。そこで、我々は、α-Syn凝集体(α-Synpreformed fibrils: mPFFs)をマウス脳内に接種し、その病理進展と睡眠覚醒表現型の関連性を検証した。αシヌクレイン遺伝子SNCA A53T変異トランスジェニックマウスマウス (以下TGマウス)の線条体にマウス由来のmPFFsを投与すると、1ヶ月後に大脳皮質、海馬に伝播した。脳幹部の橋脚被蓋核(PPT)のコリン作動性ニューロンにリン酸化α-Synで染色されるmPFFsが伝播・蓄積し、2ヶ月後にREM睡眠の増加、夜間活動低下とREM睡眠時の筋活動亢進を引き起こすRBD表現型を示すことを明らかにした。今後は、これら表現型を改善する新たな介入治療の開発を目指す。
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