研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム症 (autism spectrum disorder: ASD) は行動や神経生理学的な研究により、細部の視覚情報処理に優れるが、顔などの全体的処理や運動知覚が障害されていることが分かっており、この視覚認知障害が ASD の社会的コミュニケーション障害の基盤である可能性が指摘されている(Dakin & Frith, Neuron, 2005)。さらに、ASD児は黄色を忌避するという独特の色に対する選好性がある(Grandgeorge and Masataka., Front Psychol., 2016)ことや、成人ASDを対象とした視覚誘発電位の研究では色知覚障害の存在が示されている。本研究の目的は、ASDの色知覚障害を明らかにし定量化することである。本年度は、前年度に引続き健常成人を対象として単純な色刺激を用いて低次視覚レベルの色処理が後続する視覚処理に与える影響を検討した。 視覚処理における3つの経路(大細胞系、小細胞系、顆粒細胞系)を調べるために、各経路を選択的に刺激する色の組み合わせ(白/黒:大細胞系、赤/緑:小細胞系、青/黄:顆粒細胞系)と空間周波数(20 cpd、5.3 cpd)が異なるサイン波格子縞刺激を見ている時の脳活動を脳磁図で記録した。健常成人、計19名の脳磁図データを取得し、解析を行った。センサーでの誘発反応、センサーデータから推定して得られた1次視覚野及び周辺視覚領域の時系列データを時間周波数解析し、視覚野毎に刺激の色や空間周波数に対する特徴の同定を行った。
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