研究課題/領域番号 |
18K15354
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 一浩 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (90813907)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 社会的敗北ストレス / 糖化最終産物(AGEs) / 糖化ストレス / 不安様行動 |
研究実績の概要 |
本研究は統合失調症発症時の社会ストレス脆弱性の低下に対してカルボニルストレスが与える影響をマウスの社会的敗北ストレス負荷モデルを用いることで明らかにすることを目的とする。 計画2年目となる令和元年度は、社会的ストレスによる糖化最終産物(AGEs)産生経路を明らかにすることを目的とし研究を行った。 方法としては、社会敗北ストレスモデルマウスについてコントロール群と社会的敗北ストレス負荷後の脆弱群、レジリエンス群に分けて比較を行った。これらの各群のマウスについて、脳部位ごとにAGEs産生における中間産物である反応性カルボニル産物RCOs(メチルグリオキサール;MGO,グリオキサール;GO)の脳内の濃度についてHPLCを用いて測定した。 結果、ストレス脆弱性群において、嗅球のMGOが上昇し小脳においてはMGOは減少していた。また前頭前皮質(PFC)におけるMGO濃度と不安様行動が関連していることが確認できた。現在はMGOから産生されるMGH1に関する抗体を用い、免疫組織学的な脳切片の蛍光染色を行い、脳内のMGH1蓄積細胞を特定するべくより詳細な検討を続けている。 現在、さらに健常者、統合失調症患者由来の臨床血液検体を用いて、血中のRCOsと精神・行動表現型との関連について検討を開始している。目下、検体収集を継続し分析を続けているが、一部では健常者において一般的精神健康評価尺度(GHQ-28)における不安・抑うつ尺度とMGOが関連することがわかってきている。今後は、統合失調症患者と健常者の比較も行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会的敗北ストレスモデルにおいて生じる糖化ストレスの亢進に関して、実際に糖化ストレスマーカーの変動を確認することが出来ており、さらに脳部位特異的ないくつかの興味深い変動を見出すことができている。よって当初の令和元年度研究計画を達成できていると考える。 さらに、既に臨床検体に関する検討も開始を始めており、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、社会的敗北ストレスによって生じる糖化ストレスが実際に脳のどの細胞に障害を及ぼしているのかについて、免疫組織学的な検討を行っていく。 今後は、細胞種特異的・タンパク特異的な変化をとらえることを目標とする。 同時に統合失調症患者由来の臨床検体を用いた検討を行い、精神疾患と高カルボニルストレス状態の因果関係を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度より詳細な免疫組織学的検討を計画し、抗体やHPLCを用いた測定時の際の試薬を購入するために予算を計上していたが、マウス脳組織切片の作成に時間を要したため抗体や試薬の使用が次年度に繰り越しとなり次年度使用額が生じた。またCOVID-19流行により、参加予定学会が延期となり次年度使用額への繰り越しを行う必要が生じた。 これらの予算は令和2年度において、令和元年度に行う予定であった免疫組織学的検討を今後準備出来次第実施するため、次年度の抗体購入費、試薬購入費として使用する予定である。
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