研究課題/領域番号 |
18K15358
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤澤 貴央 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (50636644)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | SOD1 / ALS / 亜鉛 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis ; ALS)は病態分子機構に基づく根本的な治療法の無い極めて重篤な進行性神経変性疾患であり、一刻も早い創薬基盤の開発が望まれている。家族性ALSの原因遺伝子の一つであるCu,Zn-superoxide dismutase(SOD1)は、遺伝子変異により構造変化を起こして細胞毒性を発揮する。これまでに我々は野生型SOD1も亜鉛欠乏ストレス状況下では変異型様構造をとることを見出していたが、その詳細な分子機構は全く解明されておらず、変異型様SOD1タンパク質の性質自体ほとんど不明であった。本研究では、ストレス条件下でSOD1が構造変化する分子機構の詳細と、変異型様SOD1の性質に関する基礎研究を行うことで、SOD1遺伝子変異によらない家族性ALSおよび孤発性ALSにおける変異型様SOD1の病態生理学的意義を明らかにすることを目的とする。本年度は、以下の2つの項目について解析を行った。 (i)ゲノムワイドsiRNAスクリーニングによる亜鉛欠乏依存的なSOD1の構造変化メカニズムの解析 これまでにゲノムワイドsiRNAスクリーニングにより、亜鉛欠乏依存的なSOD1の構造変化に関与する複数の因子を同定していた。本年度は細胞内シグナル伝達経路の一つであるMEK-ERK経路がSOD1の構造変化を制御することを明らかにし、学会発表を行った。 (ii)変異型様SOD1の相互作用タンパク質の解析 昨年度までに、質量分析法により変異型様SOD1と結合する複数の候補因子を得ていたが、本年度はそれらの中から、これまでにSOD1との相互作用の報告のない一つの因子に着目した。共免疫沈降法により、亜鉛欠乏条件下において両者が結合することを確認した。今後、その結合の生理的・病態生理学的意義を検討していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初の設定目標であるSOD1の構造変化メカニズムと変異型様SOD1の相互作用タンパク質の解析について予定通りに研究を進めることができた。特に、SOD1の構造変化メカニズムについては順調に解析が進み、学会発表を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、変異型様SOD1の機能解析を進めていく。今年度は、昨年度に進めてきたSOD1の構造変化メカニズムと変異型様SOD1の相互作用タンパク質の解析について、より深く掘り下げた研究を行う。特に、申請当初の設定目標であるALSとの関連に着目して研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う実験中断期間が生じたため、生化学・分子生物学実験消耗品費として計画していた研究経費に未使用額が生じた。この未使用額については、生化学・分子生物学実験消耗品費として、次年度に全額を使用予定である。
|