研究課題
シナプスAβオリゴマーは認知症の発症と関連があることが報告されている。シナプスにおけるBACE1によるAPPの切断を制御することは新たなAD治療の戦略になり得ると考えられる。このような背景から、我々はシナプスにおけるBACE1の制御因子として、シナプス小胞タンパク2B(SV2B)をこれまでに同定した。面白いことにSV2BのアイソフォームであるSV2Aを標的タンパクとする抗てんかん薬であるレベチラセタムは新規のAD治療薬の候補となっていることが報告されている。今回の研究では、SV2BがBACE1によるAPP切断を抑制する機序についてより詳細に解明していくことを目的とした。方法としては、まず野生型ノックアウトマウスとSV2Bノックアウトの大脳皮質を用いたサンプルについて抗BACE1抗体を用いた免疫沈降法を施行する。得られたサンプルについてSDS PAGE、銀染色を行い、野生型ノックアウトマウスとSV2Bノックアウトマウスのサンプルで異なるパターンを示すバンドを切り出し、質量分析にかける。以上によりSV2Bの存在下でしかBACE1と結合しないタンパクが同定されると推測され、そのタンパクはSV2B/BACE1の相互作用に関与する候補タンパクになると考えられる。結果として再現性を持って(n=3)、野生型マウスのサンプルで同定できるが、SV2Bノックアウトマウスのサンプルでは同定できないバンドが60kDa付近に認められ、このバンドを切り出し質量分析にかけた。質量分析の結果、Tubulin alpha 1C、Myelin proteolipid protein、60kDa Heat shock proteinがSV2B/BACE1の相互作用に関与する候補タンパクとして同定された。これらのタンパクとBACEとの相互作用についての報告はこれまでになく、今後検証していく必要がある。
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