脳梗塞や外傷後の筋痙縮や、神経筋疾患による筋収縮力低下には現在有効な薬物治療がない。骨格筋特異的ミオシン軽鎖キナーゼ(skMLCK)によるミオシン制御軽鎖のリン酸化は骨格筋の収縮を修飾する重要な分子機構であり、skMLCKの作用を調整することで筋収縮力増加もしくは減少作用があると考えられる。同酵素を標的とする薬剤は開発されておらず、本研究ではskMLCKの更なる生化学的機構、分子機構解析を行うと同時に、skMLCKに作用する低分子化合物を同定し、新規筋弛緩薬、収縮薬開発を行っている。これまで東京大学低分子化合物フルライブラリを用い、数十の阻害薬と12の活性化剤の発見した。これらを用い、生体での筋収縮力を評価する予定である。 現在、skMLCKによる筋収縮力の変化を捉えるため、SODマウス(家族性筋萎縮性側索硬化症モデルマウス)を用い、skMLCKの遺伝子導入を行い発現形を評価している。具体的にはAAV6を用い、AAV6/eGFP-T2A-skMLCKを作成しマウスに筋肉注射を行ったうえで十分な遺伝子発現、タンパク発現が確認された。また、筋収縮力の増加も確認され、特に強縮刺激時には大きな筋収縮力増強効果を見ることができた。
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