研究課題/領域番号 |
18K15373
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
松薗 構佑 自治医科大学, 医学部, 助教 (80809070)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | SCA36 / リピート病 / イントロン / 運動ニューロン / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究では、SCA36 (脊髄小脳変性症36型) における多系統の神経障害機序を解明することを目的としている。そのため、1)SCA36患者由来のヒトiPS細胞 (人口多能性幹細胞) を各種系統の神経細胞 (運動神経細胞、ドパミン産生細胞、大脳皮質細胞) に分化させ、その分化能及び遺伝子発現を解析する、2)SCA36患者由来のヒトiPS細胞を対象に新たな病態機序の可能性について検討する、3)SCA36疾患モデルマウスを作製し、その行動解析を行う、の3方向からの研究を予定している。 既に、研究代表者らはSCA36患者由来のiPS細胞から運動神経細胞に分化させ、遺伝子発現については解析し、論文に既報告している。平成30年度は1) SCA36患者由来のiPS細胞からさらに別系統の神経細胞に分化させ、解析を行う予定であった。しかし、現状予定していた計画に比べて十分な研究結果が得られていない。 一方で、新たに SCA36患者を複数同定することに成功した。SCA36患者の分布には集積地が存在し、特定の地域にのみ集中していると以前は考えられてきたが、実際はより広範囲にSCA36患者が生活していることが考えられる。実際のSCA36患者を新規に複数家系同定したことで、臨床症状と病態機序の解明、即ちTranslational Researchに繋がるものと期待される。今後予定している工程を完遂し、SCA36における多系統病態機序の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原因として、十分な研究成果を最終的に得るために、平成30年度は実験計画と環境の整備に時間と労力を費やしたこと、勤務地で新たに SCA36患者を複数同定したことが考えられる。これまで日本におけるSCA36患者は特定の地域に集積しており、研究者らの地域には極めて稀少であると考えられてきた。しかし、研究代表者は原因不明の脊髄小脳変性症と長年考えられてきた患者の内、3名がSCA36であることを新たに発見した。その内2名は同胞例だが、疾患の重篤度が大きく異なっており、その病態機序はSCA36の多系統の神経障害機序にも関与していると考えている。 そのため、平成30年度は基礎研究の面では十分な成果は挙げられなかったが、将来的に研究をより飛躍させうる臨床面での成果を挙げることができた。最終的により良い研究成果を得るための、平成30年度は準備であり、今後予定している通りの工程を行うことで本研究を遂げることは十分に可能な状態である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の実績で挙げた1)~3)の研究項目の内、令和元年度は少なくとも1つは達成する必要がある。既に研究代表者はiPS細胞に関する実験技術について十分な経験を有していることから、まず1) に関する達成を目標とする。 令和2年度に、2)および3)を達成し、本研究を完遂する予定である。 現状、本研究遂行に関して、研究計画を変更する必要はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は予定していたよりも研究の進捗が遅れたが、研究準備のため、ほとんど未使用額は生じなかった。次年度使用額は19557円だが、令和元年度は遅れていた分の研究を進めることからその研究費を使用する予定である。
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