これまでのSCA36患者由来のiPS細胞を用いた解析から、SCA36ではNOP56の発現低下が起こっていることが示唆された。しかし、SCA36では運動ニューロン障害と小脳失調と多系統の障害が起こるため、NOP56の発現低下により、どのような神経系の異常が起こるのかは分からなかった。そのため、NOP56のノックアウトマウスを作製したところ、ホモマウスでは出生後短期間の内に死亡し、小脳が低形成であることが判明した。 当初、NOP56の発現低下により、「運動ニューロン障害が起こる」と予想していた結果に反し、「小脳低形成」が起こることが分かったことで、SCA36において小脳失調の原因はNOP56の発現低下であり、運動ニューロン障害の機序はRNA fociやRAN translationなど他の機序によることが分かった。 NOP56の正常の機序はこれまで不明な点が多かったが、小脳形成と維持に重要な分子であることが考えられ、NOP56ノックアウトマウスは脊髄小脳変性症の貴重なモデル動物であると考えられる。
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