研究実績の概要 |
昨年度はLRRK2-KOマウスにおける腸管神経形態と腸管運動の解析を進めた。その結果、KOマウスの腸管神経では、腸管神経細胞の数、軸索束の太さ、グリア細胞の数などの明らかな形態異常は見られないことが明らかになった。また、腸管神経の主要なサブタイプである、Calretinin陽性神経、nNOS陽性神経の比率にも明らかな差がないことを確認した。近年、腸管神経細胞が早いサイクルで細胞死と神経新生を繰り返し、ダイナミックな入れ替わりサイクルによって正常機能を維持していることが明らかにされつつある(Kulkarni et al., 2017)。そこで、LRRK2-KOマウスにおけるSox2陽性細胞を解析した。Sox2は未分化細胞のマーカーとして、幹細胞の解析などに用いられる分子である。腸管神経系においては、グリア細胞で高く発現していることが知られているが、グリア細胞から分化した神経細胞にも発現していることが分かっている(Belkind-Gerson et al., 2017)。腸管神経細胞マーカーとして使われている抗Hu C/D抗体を用いた免疫染色の結果、KOマウスでは、Sox2とHuの両陽性細胞数が有意に増加していた。この結果は、LRRK2が腸管神経細胞の入れ替わりサイクルを制御することで、腸管神経系の機能をコントロールしている可能性を示唆している。 また、大腸運動の解析では、Spatiotemporal mapを用いたex vivo解析を試みた。従来の筋収縮を測定する方法とは異なり、Spatiotemporal mapによる腸管運動の解析では、腸管の連続的な分節運動や蠕動運動を解析することが可能となる。解析の結果、野生型マウスでは連続した蠕動運動を確認する事ができた一方で、KOマウスでは断片化した部分的な蠕動運動が有意に増加していた。
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