研究課題
アルツハイマー病において、過剰リン酸化タウから成る神経原線維変化は最初に青斑核、嗅内野に出現し、青斑核や嗅内野の神経細胞脱落に伴い、海馬や大脳皮質へ拡大すると考えられている。ショウジョウバエを用いた研究から、ウォルフラム症候群の原因遺伝子であるWFS1の発現レベルが低下すると、神経細胞がタウの神経毒性に対し脆弱になることが明らかとなったため、本研究ではWFS1が、アルツハイマー病における神経変性の進行に影響する新たな病態修飾因子である可能性を考え、その発現レベルがタウ病理の進行、および神経変性に影響することを検証する。糖尿病がタウのリン酸化を亢進することから、加齢依存的に高血糖を呈するWfs1欠損マウスの脳では内在性のタウ病理が出現している可能性が想定された。Wfs1欠損マウスでは9ヶ月齢で顕性糖尿病が認められ、高血糖による死亡事例が多発すると予想されたが、当研究センター実験動物施設棟では、15ヶ月齢に到達するまで死亡事例なく飼育を継続することができた。そこで、15ヶ月齢の個体の脳組織を用い、Wfs1欠損による検討を行った。しかし、Wfs1欠損マウスの青斑核神経細胞(細胞体、および神経軸索)にリン酸化タウ(AT8エピトープ)の蓄積は認められなかった。また、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて青斑核にヒトタウを高発現すると、タウのリン酸化(AT8エピトープ)の亢進が認められ、タウ病理を創出できることが分かったが、その際に、対照群となる、mcherryを発現するAAVベクターの投与個体においても青斑核の神経細胞においてノルアドレナリン合成酵素等の発現が著しく減少していた。投与したAAVベクターの力価が高すぎ、神経細胞に負荷がかかっている恐れがあったため、ベクターの力価を調整した。
すべて 2021 2020
すべて 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)