研究課題
本研究は、1) まず、心臓リハビリテーション患者で乳酸濃度を測定し、経皮的汗中乳酸センサーと呼気ガス分析検査による嫌気性代謝閾値(AT)との相関を明らかにする。続いて、ショック患者や循環不全患者において経皮的汗中乳酸センサーの持続的モニタリングにより血中乳酸濃度の上昇または低下傾向を正確に反映できるかどうかを確認する。2) 動物実験を行い他の循環障害マーカーとの対比も行い、臓器障害マーカーとしての有用性を検討する。3) そしてショック患者における持続的血中乳酸濃度モニタリングが実際に治療効果や予後の改善に寄与できるかを検討するものである。結果、本新規ウェアラブルデバイスを用いて測定した汗中乳酸は、血中乳酸とよく一致することが明らかになった。また、健常者を対象にした検討で、現在ATを評価するために広く用いられている心肺運動負荷試験(CPX)によって測定したAT到達時間と、本デバイスで認識できる乳酸上昇タイミング(LT到達時間)が良い相関を認めることを明らかにし、報告した(r=0.95、p=0.001)(第25回日本心臓リハビリテーション学会学術集会)。しかし、十分な発汗を認める強度の運動負荷が可能である健常者においては本ウェアラブルデバイスの有効性が示されたが、心不全患者・ショック状態の患者など、いわゆる「汗をかきにくい」対象者の場合には測定が困難であった。本ウェアラブルデバイスを用いて測定が可能となる条件について、ロジスティック解析を行った結果、体水分量が最も影響する可能性が示唆された。今後の研究にあたり、微量の汗でも測定ができるようにデバイスの改良を加え、汗をかきにくい心疾患患者やショック患者においても簡便・非侵襲的かつ持続的に血中乳酸濃度が測定できるようにすることが課題である。
すべて 2020 2019
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)