研究課題
サルコイドーシスは原因不明の肉芽腫性疾患で多臓器に障害を及ぼすとされ、その中でも心疾患の合併は生命予後に大きく関与するとされている。徐脈性不整脈の一つである完全房室ブロックなどの心筋内伝導障害や心機能が進行性に低下する心臓サルコイドーシスに対し、副腎皮質ステロイド剤による薬物治療が奏功するとされてはいるが、その反面、長期間に投薬が及ぶことによる耐糖能異常、高脂血症、肥満、骨粗しょう症などの副作用の問題や薬剤中止時期などに関して確立された指針はない。またステロイド剤使用後に炎症が再燃した場合や十分な効果が見られない場合にその対処法として確立された治療指針はない。これらステロイド治療不能例や無効例に対し、免疫抑制剤であるメトトレキサート使用の有効性に関しての報告は以前より散在するが治療介入方法やその効果に関して確立されたエビデンスは十分とは言えない。サルコイドーシスの活動性を評価する方法として、本邦では2012年4月より18FDG-PET/CTが保険適用となり、2014年度ガイドライン内にもその有効性は明記され、今後ますます臨床上重要度が増すと考えられる。今回、サルコイドーシスの中でも心臓サルコイドーシス患者に主眼を置き、画像検査モダリテイーである18FDG-PET/CT撮像を行い、活動性炎症;SUV(standardized uptake value)とSUV集積部位の総量(TLG)の測定を行うことにより炎症部位や炎症の範囲を特定するとともに治療介入することにより、治療効果判定デバイスとしての18FDG-PET/CTの有効性とステロイド治療不能例や無効例に対するメトトレキサートの有効性を検討する。
2: おおむね順調に進展している
本研究は心臓サルコイドーシスと診断され、試験選択基準に適合し同意を文書で得られた患者に対し、18FDG-PET/CT撮像にて心筋内に異常集積の確認。治療が必要な患者に対し、治療指針によって定められているステロイド薬30mg/日で治療開始。半年以上の期間をかけてステロイド薬が5mg/日まで減量時点で 2回目の18FDG-PET/CT撮像を行う。活動性炎症(TLG)が70%以上改善していない群=治療抵抗群をステロイド薬増量群とメトトレキサート群の2群にランダムに分類。ステロイド増量群に関しては再度30mg から適宜減量、メトトレキサート群に関してはステロイド5mg に加えてメトトレキサート6mg/週 内服を行う。ステロイド増量やメトトレキサート追加に伴う副作用発現の有無を評価、さらに半年後に3回目の18FDG-PET/CT撮像にてTLGを再定量することにより治療効果判定を行う。同意取得症例数67人、実施症例数67人、完了症例数、40人。中止症例数 3人(中止例は心臓サルコイドーシスによる心不全死亡1人、大動脈解離による死亡1人、転院による離脱1人の3人)、補償を行った件数 は0人である。解析が可能な56人のうち、半年間の治療で48人 (85.7%) がresponder群(R 群)、8人 (14.3%) がpoor-responder群 (P-R 群)に分類され、P-R群に対してはさらにPSL再投与群(N=5)とMTX投与群(N=3)にランダム化し治療を行ったところ、TLG低下率はPSL再投与群が59.9% であったのに対し、MTX群のTLG低下率は89.4% であった。
本研究は前向き治療介入研究ではあるが、ステロイドによる治療介入により約85%の患者においてTLGの70%以上の低下を認めたが約15%の患者において十分な治療効果を見出すことが出来なかった。治療反応群と治療抵抗群の両群間にある患者背景の比較を行うことにより治療抵抗群の特徴を明らかにするとともに、残血液検体を使用して治療抵抗群で特異的に上昇をしているバイオマーカの検索を引き続き行う。
活動性炎症(TLG)が70%以上改善していない群=治療抵抗群をステロイド薬増量群とメトトレキサート群の2群にランダムに分類するといった介入方法を行っているが、研究開始前時に予想されていた以上にプレドニン治療への反応性が良好であったため、治療抵抗群を確保するためにはより多くの新規患者を登録する必要があり、研究期間の延長を余儀なくされた。現時点では登録患者のうち、治療介入群が11人となり、目標患者に達することができ、今年度は現行治療を継続し、バイオマーカー測定を行うとともに、論文化を予定している。
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