研究実績の概要 |
日本人地域高齢者を対象にした頭部MRI検査を含む疫学調査の成績を用いて、APOE-ε4多型と脳構造変化、脳部位別の灰白質容積との関連について検討した。 2012年の高齢者調査で頭部MRI検査および遺伝子研究の同意を得た65歳以上の久山町住民1,030名を解析対象者とした。対象者はAPOE遺伝子のε4多型を有する個数によって0, 1, 2個の3群に分類した。頭部MRI画像からVBM8と脳アトラスを用いて前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、島葉、帯状回、深部灰白質、小脳およびアルツハイマー病関連領域(海馬、扁桃体、海馬傍回、嗅内野)の脳部位別灰白質容積を計測し、それぞれ頭蓋内容積に占める割合を算出した。APOE遺伝子のε4多型を有する個数別にみた各容積割合は、性、年齢、教育歴、高血圧、糖尿病、血清総コレステロール、BMI、喫煙、飲酒、運動習慣、画像上の脳血管障害で多変量調整して算出した。 多変量解析の結果、APOE遺伝子のε4多型が無い者と比べ、ε4多型を2個有する者では有意に全脳容積が小さく、白質病変容積が多かった。脳部位別に検討すると、APOE遺伝子のε4多型を有する個数の増加は、海馬、扁桃体、海馬傍回、嗅内野の灰白質容積低下と有意に関連していた。本研究結果はアルツハイマー病の病態解明やその予防対策の一助になると考えられる。
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