研究課題/領域番号 |
18K15401
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
亀田 貴寛 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80758558)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高比重リポタンパク / 粥状動脈硬化 / コレステロール引き抜き能 / LCAT |
研究実績の概要 |
HDLには粥状動脈硬化を抑制する機能の存在が知られており、その代表的な機能であるコレステロール引き抜き能(CEC)が心血管疾患の発症リスクの予知に有用であることが示唆されている。しかし、研究的に用いられているCEC評価法は「細胞培養、放射性同位体使用、手技煩雑、装置化困難」という問題点を持ち、臨床応用のためには簡易化が不可欠である。そのため、我々は新たなCEC評価法として固相化リポソーム結合ゲルビーズ(immobilized liposome-bound gel beads; ILG)を用いた簡便で迅速な分析法の開発を目指している。今回、HDLのメタボリズムがCECに及ぼす影響を評価するために、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)に着目し、ILG測定法と従来法にてLCATがCECに与える影響の評価を試みた。 HDL中のLCATの活性の阻害調節は、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸);DTNBまたは熱非働化処理によって行い、遊離型コレステロール(FC)からエステル型コレステロール(EC)への変換が阻害されることを確認した。LCAT阻害がHDLのCECに及ぼす影響に関してILG測定法と従来法では、同様の結果が得られ、HDL中のFC/EC比の多寡によるCECの有意な差は認められなかった。また、同タンパク濃度に調整したHDL2とHDL3のCECを比較したところ、HDL2において高いCECが認められたことから、LCATは直接コレステロールの引き抜き段階に関与しているというよりはHDLの組成に関わるメタボリズムの結果として間接的にCECに関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞に代わる測定法の構築は、先行研究でのリポソームをクロマトグラフィーの担体へ固定化する手法の確立により革新的に前進した。従来法との比較検討から、ILGが培養細胞に代わるコレステロールドナーとして有効であることが確認されている。加えて、HDL中のコレステロール比の異なるHDLやHDL2とHDL3のCECの測定も可能であることを示した。引き続き、従来のCEC測定法と新しい方法による多角的なHDLの比較試験を行う必要がある。確認されれば、臨床検体の分析への応用へと進展する。
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今後の研究の推進方策 |
従来のCEC測定系では培養細胞の各種トランスポーターの存在がコレステロールの引き抜きに関与するが、トランスポーター不在のリポソーム固定化によるILGにおいても同様の結果が得られるメカニズムを明らかにする必要がある。今後、患者検体および心血管疾患発症リスクと関連が示唆される化学修飾HDL群の測定を通じて本機能の臨床的意義を追求していく予定である。 ILGが従来法と相関する機構を解明するため、リポソーム表面のリン脂質の移動に着目し、蛍光標識されたリン脂質を含むリポソームを担体へ固相化することに成功した。今後はリン脂質とコレステロールの移動をトレースし、測定系へ与える影響を明らかにしたい。 加えて、HDLの脂質の総合的な抗酸化能を直接評価するための測定法の開発を目指し、HDLの各リポ蛋白分画における抗酸化物質の割合に着目し、経時的測定法による抗酸化能の結果と比較検討する予定である。
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