これまでの検討により、急性骨髄性白血病(AML)の細胞株に酸化ストレスを負荷することにより、多機能蛋白APE1を含む塩基除去修復遺伝子の発現が上昇することを明らかにした。APE1はノックダウンや薬剤で阻害することにより、AMLの増殖が抑制される結果が得られたことから、その機序を検討した。マイクロアレイでの検討によりOSGIN1がキーとなると着目したが、結果としては関与を裏付けるような結果は得られなかった。また、APE1ノックダウン株を用いて、細胞周期や細胞増殖に関わるその他シグナル経路を検討したが、増殖抑制の機序解明には至らなかった、原因としてはAPE1のノックダウン効率が蛋白レベルで60%程度であり、発現抑制が不十分であったことが考えられたため、新たにAPE1ノックアウト株を作製した。ノックアウト株はAMLにおいてはまだ樹立の報告がなく、新たな知見が得られると期待される。今回作製したAPE1ノックアウト株はほとんど増殖せず、分化やアポトーシスの亢進を示唆する形態学的特徴が得られた。再現性を確かめる必要はあるが、APE1がAMLの未分化性の維持に関与することで、細胞増殖の維持に関わる可能性が示唆された。
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