野生型マウス(♂、C57BL/6J)ならびにカテプシンK遺伝子欠損マウス(♂、CatKKO)の片側下肢骨格筋にカルジオトキシン(Cardiotoxin;CTX)を投与し、骨格筋障害を誘導した下肢障害モデルを用いた実験において、カテプシンKは筋肉障害後に高発現し、炎症を惹起することにより筋肉の障害を増強し、再生を遅延させることが明らかになった。 そこで、現在、癌や臓器不全を抱える患者の死亡やQOLの低下に強く関わり臨床的にも問題となっているカヘキシアによる骨格筋萎縮と、カテプシンKとの関係の検討を開始した。 マウス肺癌細胞株(Lewis lung carcinoma; LLC)を野生型マウスの背部皮下に移植したカヘキシアモデルを用いて骨格筋の再生におけるカテプシンKの役割及びその機序解明を行うため、今年度は、野生型マウスとカテプシンKノックアウトマウス(Cat K KOマウス)のカヘキシアモデルマウスの骨格筋の炎症性細胞浸潤やリンパ細胞浸潤の評価ならびに電子顕微鏡を用いミトコンドリアの形態比較を行った。マクロファージ染色(CD68)の結果、コントロール群野生型マウスに比較し、カヘキシアモデルマウスにおいてマクロファージ数の増加が認められ、特にカヘキシアモデルの野生型マウスと有意な増加を認めた。また、サルコペニアはミトコンドリア機能不全によるインスリン抵抗性などの代謝異常の惹起が,骨格筋の量的・質的な異常を来すと考えられていることから本研究でもミトコンドリアの形態評価を行ったところ、野生型のカヘキシアモデルマウスでグリコーゲン顆粒の有意な増加を認めた。 本研究により、カテプシンKが、がんによる悪液質に関連したマウスの骨格筋の萎縮と機能障害にも関与している可能性が示唆された。
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