FABP4の2型糖尿病患者においてのインスリン抵抗性に与える臨床的意義を検討するとともに、FABP4の筋細胞への糖代謝に関する直接作用について、マウス骨格筋細胞C2C12を用いて検証を行った。 臨床的検討は2型糖尿病患者29名、非糖尿病ボランティア23名に対して、グルコースクランプ試験および食事負荷試験を用いて行った。2型糖尿病患者では食事負荷試験において、空腹時のFABP4が高値であり、また食後にFABP4が上昇する症例を認め、2型糖尿病患者では食事によるFABP4の動態が異なることを見出した。グルコースクランプ試験によるインスリン抵抗性指標であるGIRは全症例においてFABP4濃度と逆相関を認め、FABP4濃度とインスリン抵抗性が相関することを見出した。 基礎的検討としては、マウス骨格筋細胞C2C12細胞培養液中にFABP4を添加することによりその直接作用を検討した。FABP4添加により細胞活性の低下および、インスリン刺激による糖取り込みの低下を認めた。ウエスタンブロッティングではAKTのリン酸化低下を認めたことから、FABP4は骨格筋細胞へ直接的に作用し、インスリンシグナルの低下を介して、細胞への糖取り込みの抑制することから、インスリン抵抗性を生じることを見出した。 本研究により臨床的に2型糖尿病患者においてFABP4の食事より動態が非糖尿病ボランティアと異なること、また骨格筋細胞への直接的作用を有し、インスリン抵抗性に関与する機序について明らかとなったことは、2型糖尿病の病態解明に貢献したと考えられる。
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