研究実績の概要 |
老化に伴う多くの疾患はミトコンドリア機能、オートファジー機能, 血中NAD量低下が関与すると考えられているがその詳細な分子機構は明らかでない。我々が作成した、ミトコンドリア機能不全マウスの解析から心筋特異的ノックアウトマウスでは拡張型心筋症を早期に呈することを見出し、寿命は約500日に減少することを突き止めた。このマウスの心臓を用いて様々な解析を行った。このミトコンドリア機能不全マウスではオートファジー機能の中でも特にリソソーム機能が阻害されていること、その原因がミトコンドリア機能障害より発生したNAD合成阻害であること、は既に発見していた。今年度はさらにNAD合成阻害について、リソソーム機能との関連性について、詳しく解析した。 ミトコンドリア機能不全マウスの心臓組織ではNAD合成量が減少していた。NAD合成経路の1つであるサルベージ経路の酵素であるNmnat3が細胞質でオートファジーの特にリソソーム機能を亢進することを発見した。このNmnat3は転写因子HIF1αによって発現を制御されていることも証明した。 細胞内NAD量とリソソーム機能には関連性があることをNAD合成阻害剤であるFK866を用いて証明した。さらにリソソーム活性にはATPが必須であることから、両者を関連づける酵素として解糖系酵素のGAPDHとPGKに注目した。この2つの酵素はリソソーム膜に局在することを発見し、新たなメカニズムとして細胞質のNADはGAPDHとPGKを介してATPを産生しリソソーム機能を維持することを提唱した。
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