研究課題/領域番号 |
18K15424
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
竹之内 和則 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30646758)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血管内皮増殖因子 VEGF / 3次リンパ節 / 高内皮細静脈 HEV / 過剰発現マウス / 免疫抑制・減弱 / がん免疫 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、B細胞特異的に血管内皮成長因子Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) を過剰発現するマウスを作成し、B細胞由来のVEGFは、リンパ節内で高内皮細静脈 High Endothelial Venule (HEV) を増加させ、脾臓の肥大化と赤脾髄・白脾髄の組織構造の崩れをもたらし、 ovalbuminに対する獲得免疫・抗体産生を減弱させることを報告してきた (J Immunol. 2010)。 また、免疫系組織は胸腺・骨髄から成る1次リンパ組織やリンパ節・脾臓・パイエル板などの2次リンパ組織から成るが、近年、3次リンパ組織の存在が注目されてきた。3次リンパ組織は明確な隔壁を持たない、T cell zone、B細胞濾胞とHEVから成るリンパ様組織であるが、3次リンパ組織はがん免疫・自己免疫疾患・遷延性の腎臓病のような慢性的な免疫異常との関連が示唆されている。 このことから、VEGFを過剰発現するマウスを用いれば、3次リンパ節様構造を再現し、がん免疫・自己免疫疾患・遷延性の腎臓病のような慢性的な免疫異常を解析できるのではないか、という着想に基づき、今年度は基本的なリンパ節の組織解析を行った。 1)B細胞由来のVEGF過剰発現マウスのリンパ節内にHEVの増生を改めて確認し、その組織学的特徴を検討した。主として、HEV組織におけるMECA-79、Limphotoxinなどの発現量を免疫染色などの方法により確認した。 2)B細胞由来のVEGFにより、なぜ脾臓の組織構造の崩れが認められるのかを検討した。通常のリンパ組織で認められるような胚中心構造が保持されているかをKi67、B細胞マーカー、T細胞マーカーを用いて組織染色を行い、比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B細胞特異的VEGF過剰発現マウスにおいて、2次リンパ組織であるリンパ節内の組織構造について比較検討した。実験結果は概ね想定通りの結果を示しており、研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ節内の基本的な解析が終了したので、今後は予定通り、2次リンパ組織としての脾臓内の構造解析と、3次リンパ節としての傍腫瘍組織解析を行っていく。 傍腫瘍組織としての3次リンパ組織が想定通り形成されるかは定かでないが、センチネルリンパ節の解析は可能であるので、VEGFの量的な差によってリンパ組織構造に変化が起きるかを解析する予定である。 また、B細胞特異的VEGF過剰発現マウスに対するovalbumin投与によって、抗体産生やサイトカイン産生が減弱したことを既に確認している。2次リンパ節である脾臓内での濾胞構造が崩れていることから、ナイーブB細胞から形質細胞への分化に障害が起こっている可能性が示唆される。脾臓とリンパ節において、ovalbumin 投与時の形質細胞の増加量、および抗体産生量を免疫染色・フローサイトメーター、ELISAなどにより定量的に評価することを考えている。
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