現在新型コロナウイルス感染の影響のため新規症例登録を休止している。これまでに施行した肺高血圧症患者214例(性別 女性79%、平均年齢は56歳、mean PAP平均値34mmHg)をmeanPAP25未満の境界群、25以上40未満の軽中等症群、40以上の重症群に分類し検討を行った。なお、境界群は健常人という意味ではなく治療後にmean PAPが正常化した症例や、症候的には肺高血圧症が疑われるが、安静時のmean PAPは25未満で診断基準に満たなかった症例が含まれる。 肺高血圧の重症度による比較では、心音図の肺性II音成分において、波長・振幅いずれの肺動脈成分/大動脈成分比も境界群が軽中等症群/重症群に比べて有意に小さい傾向であったが、軽中等症群-重症群における差はみられなかった。 Mean PAP 25mmHg以上の軽中等症以上の群の診断に対するROC解析では、波長PA比のAUCが0.82、1.33以上をカットオフ値とした場合の感度は75%、特異度79%であった。また振幅PA比によるROC解析ではAUCが0.79、0.70以上をカットオフ値とした場合の感度は93%、特異度55%であった。 右心循環動態指標との相関について評価したが、mean PAPを含めたこれらの指標で有意差を認めたものの、強い相関はみられなかった。 肺高血圧の基準となるmean PAP ≧25mmHgの診断に対するROC解析では波長、振幅いずれのP/A比も肺高血圧症の早期診断に有用である可能性が示唆された。しかし軽中等症以上の重症度の鑑別や、その他の右心機能の評価には有用でないと考えられた。
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