糖尿病は高齢化に伴い収縮期心不全がない状態であっても心不全を生じる病態(Heart Failure With Preserved Ejection Fraction:HFpEF)の主要なリスク因子の一つであり、研究者はこれまで糖尿病性網膜症や腎症の進行とHFpEFが関与することを見い出してきた。 本研究ではこれまで、SGLT2阻害薬を何らかの心疾患を合併する2型糖尿病患者に投与することで、6か月後の左室拡張末期径の低下と血流依存性血管拡張反応の上昇が認められた。また、左室拡張能(E/e比)の改善と血管内皮機能(アセト酢酸と3ヒドロキシ酪酸)の上昇に相関関係が認められたことにより、SGLT2阻害薬がケトン体の上昇を引き起こしたことにより左室拡張能の改善に関連していることが示唆された。 このことを元に、更なるHFpEFのリスク因子の道程ないし、心不全予防のための最適な血糖コントロール目標の確立を推進するため、2型糖尿病者(心機能低下、HFpEF発症患者を除外)で、米国DEXCOM社が開発したDEXCOM G6(従来のCGMSよりも測定精度が高いCGMS機器で、まだ日本には保険収載されていないが、米国において最も使用されている機器)を用いて検討を進めている。 この研究において、血糖プロファイル と微小循環障害、心拡張障害 やHFpEF発症との関連を解析を行っている。また、血糖プロファイルと 拡張障害の関連については3年間経年的に測定し、血糖プロファイルと拡張障害の進行の関連を解 析する。さらに同時期にバ イオバンク試料を採取し、残余リスクを抽出、新たな HFpEF発症のリスクマーカー同定を行っている。
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