本研究で解析を行う家族性封入体筋炎の家系においては発端者と 兄弟が慢性進行性の筋力低下、筋萎縮、手指屈筋に強い筋力低下といった臨床的特徴、および筋生検でCD8陽性T細胞の非壊死筋線維周囲への包囲および浸潤、MHC-Iのびまん性染色性亢進、細胞質のp62陽性顆粒 染色性といった病理学的特徴を満たし、clinicopathologically defined IBMと診断されている。発端者には非発症の同胞が2名居り、発端者の母親と 兄弟の母親は罹患していない。家系の情報から、本家系の家族性封入体筋炎はX連鎖疾患である可能性を考えて検索を開始した。罹患者2名(発端者、 兄弟)、非罹患者2名(発端者の健常同胞)から採血を行 い、白血球から遺伝子を抽出し、Genome-Wide Human SNP array 6.0(Affymetrix)を用いてSNPタイピングを行った。X染色体劣性遺伝を仮定して連鎖解析を行い、X染色体におけるLOD scoreを計算したところ、Xp22.13-Xq21.32,Xq23-Xq25といったやや広範 でLOD score = 1程度の上昇が見られた。次に連鎖解析のデータを用いてハプロタイプ解析を行ったところ、Xp22の1.1 Mbの領域のみ、罹患者同士で共有し、非罹患者同士で共有されていなかった。またHiseq 2500(Illumina)を用いてwhole exome sequencingを行い、同領域に含まれる遺伝子のエクソン領域を検索したが、rare variantを認めなかった。
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