研究実績の概要 |
本研究は、多系統萎縮症(MSA)の病態にかかわるα-シヌクレイン蓄積、オリゴデンドログリアの機能障害やオリゴデンドログリア前駆細胞の成熟障害に着目して、MSAの脳脊髄液バイオマーカーの探索を行い、臨床応用を目指すものである。また既存の認知症関連バイオマーカー(Aβ,タウ,リン酸化タウ)との相関にも着目し、臨床症状(運動症状、認知機能など)との関連などについても解析を行った。 本研究の成果として、MSA患者と正常対照者を比較してMSA患者において脳脊髄液α-シヌクレイン、Aβ42・リン酸化タウの低下がみられることを見出した。 MSAの臨床病型別の検討では、MSAのパーキンソニズム型において、小脳型と比較してタウの低下がみられたが、他のバイオマーカーでは有意な差を認めなかった。α-シヌクレインなどの脳脊髄液バイオマーカーと臨床症状(運動障害、認知機能障害)の相関を検討したが、運動障害と相関を認めなかった。認知機能障害の重症度と脳脊髄液Aβ42相関を認め、病態に関連している可能性が示唆された。 オリゴデンドログリア前駆細胞特異的蛋白であるneuron-glial antigen 2 (NG2)に着目し、MSA患者脳脊髄液中のNG2を測定したところ、正常対照と比較してMSA患者において、有意に脳脊髄液中NG2の上昇を認めた。脳脊髄液中NG2とAβ42、総タウが正の相関を示したが、NG2とα-シヌクレインとは相関を認めなかった。 オリゴデンドログリアに関連するマーカー(NG2)とα-シヌクレイン、認知症関連バイオマーカー(Aβ,タウ,リン酸化タウ)を複数組合わせることで多系統萎縮症の診断の感度・特異度が改善する可能性が示された。
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