研究課題/領域番号 |
18K15445
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
木村 暁夫 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00362161)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗神経抗体 / 抗IgLON5抗体 / 多系統萎縮症 / 進行性核上性麻痺 / パーキンソン病 / レビー小体病 |
研究実績の概要 |
本年度、当科で確立した抗IgLON5抗体検出のためのcell based assayにより、合計125名のパーキンソン病およびパーキンソン関連疾患患者の血清中における抗IgLON5抗体の検索を行った。この125名の臨床診断名はパーキンソン病およびレビー小体病47名、多系統萎縮症(MSA)39名、進行性核上性麻痺(PSP)22名、皮質基底核変性症14名、原因不明の舞踏運動3名であった。これまでの海外からの報告による抗IgLON5抗体陽性患者の主な臨床症状として、1)睡眠障害(パラソムニア、閉塞性無呼吸、声帯麻痺など)、2)脳幹障害(嚥下・構音障害、呼吸障害など)、3)歩行時不安定性、4)舞踏運動・パーキンソニズムなどの不随意運動、5)自律神経症状など、PSPやMSAに極めて類似しており、また同報告では抗IgLON5抗体が検出された患者の中に、臨床的にPSPと診断されていた患者も含まれていたことから、我々の対象患者の中にも抗IgLON5抗体陽性患者が存在することが予想された。しかしこれまでの検討では、上記対象患者から抗IgLON5抗体は検出されなかった。一方、未知の抗神経抗体の検索を目的として、これまでにラット脳凍結切片を用い、上記対象患者12名の免疫組織染色を行った。その結果3名の血清中より抗神経抗体を検出した。この3名の中の1名である74歳男性MSA(Gilman分類でpossible MSA-P)患者の血清中のIgGは、ラット海馬初代培養神経細胞を用いた免疫染色において細胞膜表面抗原を認識した。その後、抗体の認識抗原蛋白の同定のために同じラット海馬初代培養神経細胞を抗原とした免疫沈降を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定した、cell based assayを用いた抗IgLON5抗体の検索に関しては、125名のパーキンソン病・パーキンソン関連疾患・舞踏運動病患者の血清を用いて同抗体の測定を行うことができた。また、抗IgLON5抗体以外の抗神経抗体の検索に関しても、一部の対象患者において免疫組織染色とラット海馬初代培養用細胞を用いた神経細胞膜表面抗体の検索を行うことができた。その結果、Gilman分類でpossible MSA-Pと診断された患者の血清中において神経細胞膜表面抗体を検出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関しては、継続して抗IgLON5抗体の検索を行う予定であり、最終的には当初の計画どおり、200名のパーキンソン病・パーキンソン関連疾患・不随意運動症患者の血清において検索を終了する予定である。一方、新規の抗神経抗体の検索に関しても、同様に上記200名の患者血清を用いて免疫組織染色を行い、抗神経抗体のスクリーニングを行う予定である。スクリーニング陽性患者においては、その後海馬初代培養神経細胞を用いた免疫染色により神経細胞膜表面抗原を認識する自己抗体であるかを確認する。同時にスクリーニング陽性患者の血清を用い、海馬初代培養神経細胞あるいはラット大脳ホモジネートを抗原とした免疫沈降法により認識抗原蛋白を抽出し、その後の質量分析により抗原蛋白の同定を行う予定である。また現在進行中であるが、本年度1名のMSA-P患者の血清中において検出した抗神経抗体の認識抗原蛋白を同定する予定である。
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