研究課題
AARS2というミトコンドリアのアラニル tRNA synthetaseという酵素をコードする遺伝子の異常が白質ジストロフィーの原因となることが知られ着目されてい る。白質ジストロフィーは進行性に大脳白質が変性する病態で、様々な背景疾患が想定される。その臨床的特徴の多様性や複雑性により診断を困難としている。 大多数において特異的な治療法は存在せず、治療方法の開発が待たれる病態である。生活習慣病などに起因する脳血管障害等などの環境的要因に加えて、特に若 年発症例では遺伝的要因の関与が臨床的な意義をもつ場合が多い。白質ジストロフィーを呈する原因疾患は100以上知られている。網羅的エクソーム解析 (whole exome sequencing : WES)などにより種々の原因遺伝子も特定されつつある。本研究では、なぜAARS2変異によりミトコンドリアの異常を介して白質ジストロ フィーあるいは神経障害を呈するのかを解析することを目的に掲げている。細胞実験モデルとしてHEK293細胞よりtotal RNAを抽出し、mRNAを精製しcDNAを合成 した。cDNAを鋳型にしAARS2内の配列をもつプライマーを用いてPCRで目的バンドを検出し、HEK293細胞でのAARS2発現を確認した。さらにRNA干渉法によるAARS2 の発現抑制する系を構築した。これによりミトコンドリア膜電位が低下したことをMito Trackerを用いて確認した。AARS2に含まれるミトコンドリア内でアラニンをtRNAへチャージする領域 (Aminoacylation domain)、あるいは間違ってチャージされたアミノ酸を脱アシル化する領域(Editing domain)という2つの構造の関与により上記の現象を来していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
HEK293細胞での、siRNAによるAARS2の発現抑制によりミトコンドリア機能のが低下することを確認した。AARS2に含まれるミトコンドリア内でアラニンをtRNAへチャージする領域 (Aminoacylation domain)、あるいは間違ってチャージされたアミノ酸を脱アシル化する領域(Editing domain)という2つの構造の関与が考えられる。
オリゴデンドロサイト前駆細胞などを用いて、グリア系神経前駆細胞もしくは神経細胞に誘導・ 分化させることで上記同様に白質病変の出現に関わる分子機構を検証する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Alzheimer's Disease
巻: 72 ページ: 271-277
10.3233/JAD-190775