研究課題/領域番号 |
18K15451
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 和哉 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (40774518)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリアDNA / NMOSD / 自然免疫 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorder: NMOSD)において抗アクアポリン4(AQP4)抗体の病原性は確立しているが、髄液中のIL-1β、HMGB-1などの上昇が報告されており、炎症増幅因子として自然免疫の関連も示唆されている。そこで我々は近年、自然免疫の活性化因子として注目されているミトコンドリアDNAに着目した。 まずNMOSD、多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)、および他神経疾患における髄液中のミトコンドリアDNA値を測定した。その結果、髄液ミトコンドリアDNAはNMOSD急性期ではMS急性期・他神経疾患と比較して有意に上昇していること、NMOSDでは急性期治療の介入により有意に低下することを見出した。さらに抗AQP4抗体の刺激によりアストロサイトからミトコンドリアDNAが特異的に細胞外に放出されることも明らかとした。そしてin vitroにおいて、ミトコンドリアDNA刺激によりミクログリアからのIL-1β産生が誘導されること、そのIL-1β産生にはToll-like receptor 9(TLR9)とNLRP3インフラマソームが関与していることを実験的に証明し、NMOSDにおいてミトコンドリアDNAを介した炎症促進機序が存在している可能性を報告した(J Neuroinflammation. 2018;15:125)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の研究の根幹となるNMOSDにおける髄液ミトコンドリアDNAの上昇を示し、さらにNMOSDにおける特異性や疾患活動性との関連などについて証明した。そしてミトコンドリアDNAがin vitroにおいてミクログリアから炎症性サイトカインIL-1βの産生を促進することも明らかとし、病態へ関与している可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は動物モデルを用い、さらなる炎症機序の解明や薬剤の有効性を証明するための実験を予定している。具体的にはマウスの脳や脊髄内に抗AQP4抗体やミトコンドリアDNAを注入し、神経機能評価や病理学的解析を行う。 さらにインフラマソームやTLR9など自然免疫受容体の阻害薬や、インフラマソームの構成成分であるASCをノックアウトしたマウス、炎症性サイトカインIL-6シグナルが持続的に導入されるF759マウスなど遺伝子改変マウスを用いて自然免疫シグナルに関する実験的検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は国際学会などの参加費用(旅費)を抑えることができたため、必要物品の購入を増額してもなお、次年度使用額を確保することができた。次年度は動物施設や薬剤など動物実験関連に費用を要するため、それらに充てる予定である。
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