視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorder: NMOSD)の病態解明を目標とし、自然免疫系を起点とした炎症増幅という観点からミトコンドリアDNAに着目し研究を進めている。これまでにNMOSD患者における髄液ミトコンドリアDNA濃度は他疾患と比較して有意に高く治療により低下すること、抗AQP4抗体によりアストロサイトからミトコンドリアDNAが細胞外に放出されること、そのミトコンドリアDNAはTLR9とインフラマソームなど自然免疫系を介して炎症を促進することを報告している。本年度はさらなる炎症促進機序解明のため、モノサイトを用いた検討を行った。 NMOSDではモノサイトが病巣へ動員されており炎症を促進している可能性がすでに報告されている。我々は抗AQP4抗体をアストロサイトに作用させることで、ケモカインCCL2が誘導されること、モノサイトが動員されることを見出した。そしてNMOSD患者において、髄液中のミトコンドリアDNA濃度はモノサイトの動員数と相関していること、さらにミトコンドリアDNAは自然免疫(TLR9)を介してモノサイトを活性化させることを実験的に証明した。抗AQP4抗体によるアストロサイト障害からミトコンドリアDNAが放出されることで、モノサイトの誘導・活性化による自然免疫系を介した炎症促進機序が起こっていることが示唆された(Sci Rep. 2020;10:13274)。
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