研究課題
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー (TTR-FAP) では、感覚障害および自律神経障害といった小径線維の異常が、本疾患群患者の多くで最も早期から出現する。近年、世界的にもTTR-FAPの根治的薬物治療研究は目覚ましく発展しており、またこれらの新規治療薬はいずれも早期からの治療が最も治療効果を示すため、いかにしてTTR-FAP患者に生じる小径線維の異常を早期に検出しうるかが喫緊の課題となっている。本研究では、TTR-FAPの超早期診断に有用であり、さらに臨床治験にも応用可能なバイオマーカーの開発を行うことを目的として行った。病理組織学的解析では、皮神経の中ではcholinergic neuronより、adrenergic neuronが早期から脱落しており、adrenergic neuronの解析が超早期診断により有用であることが示唆された。また、TTR-FAP患者では、早期から体幹正中部にも皮神経脱落および温痛覚閾値上昇が認められ、体幹正中部にも小径線維ニューロパチーが存在することをはじめて明らかにした。また、酸化ストレスと小径線維の障害度との比較を行った他、病理組織学的解析に、MR-neurographyを用いた画像解析や瞳孔計および最新の発汗機能検査機器による自律神経機能解析を組み合わせることで、本症の早期診断および病態評価に有用な評価アルゴリズムを考案した。本研究で開発した検査法は、現状の臨床現場の末梢神経障害の診断に活用できているが、解析に特殊な技術を要することや解析期間を要することなどからどの施設でも実施できる解析法ではなく、スループットも低い問題点もある。そのため小径線維障害を鋭敏に反映するハイスループットな病態評価法の開発が今後の課題であると考えられた。
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