CRMP2はアルツハイマー病の病理所見で異常リン酸化が報告されている。我々は、CRMP2の異常修飾が神経内輸送・オートファジー・リソソームの機能異常を引き起こし、神経変性疾患の病態に関与していると仮説を立てた。本研究では、MSAを中心とした神経変性疾患の病態をCRMP2とオートファジー、神経内輸送の観点から検討し、MSAの治療法開発につながる知見を獲得するとともに、ほかの神経変性疾患に展開することを目的とする。凍結脳(小脳)の可溶性分画分、不溶性画分に分け、それぞれの画分におけるtotal CRMP2、リン酸化CRMP1/2の発現をWestern blottingにてMSAとコントロールで比較した。total lysateと考えられるS1におけるリン酸化CRMP1/2は、小脳皮質で疾患コントロールと比較し、明らかな低下を認めた。不溶画分であるP3では、S1と比較し、MSAでリン酸化CRMP1/2の発現がみられており、MSAでは不溶画分にリン酸化CRMP1/2が蓄積する傾向があると考えられた。免疫組織染色において、MSAの小脳では白質を中心に、頚椎症、PSPと比較し、total CRMP2、リン酸化CRMP1/2の染色性が上昇していた。MSAにおけるリン酸化CRMP1/2は一部リン酸化αシヌクレインと共局在を示したことから、リン酸化CRMP1/2の一部はグリア細胞質封入体(GCI)に存在すると考えられた。CRMP遺伝子変異マウスでの検討では、CRMP2欠損マウスでは、LC3Ⅱ/Ⅰが低下し、リソソーム輸送が亢進していた。MSAの小脳において、リン酸化CRMP2はLC3とも共局在を示すことからCRMP2がオートファジー・リソソームの輸送を修飾し、GCIに蓄積する機序が考えられた。
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