研究課題/領域番号 |
18K15459
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
三宅 綾子 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (10760184)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 白質脳症 / エクソーム解析 / 原因遺伝子 |
研究実績の概要 |
白質脳症は大脳白質を病変の主座とする疾患の総称である。原因疾患は多岐にわたり、遺伝性も含め全く病態の異なる疾患が混在する。我々は卓上型次世代シーケンサーを用いて特定の白質脳症関連55遺伝子について、微細構造異常を含めて検出可能な解析系を開発し、解析を行ってきた。その研究を通じて収集した白質脳症60例のうち、異常が検出されなかった52例および追加収集した白質脳症52例に対し、臨床病型・画像所見から分類を行い、遺伝子異常が疑われる群に対してはエクソーム解析を施行した。共通項が得られている例ごとにエクソーム解析の結果を検討することで、新規原因遺伝子の同定をめざす。本研究により成人白質脳症の全体像の把握、効率的な診断、治療方針の決定が可能となると考えられる。
現在までの進捗状況に記載の通り、当該研究で収集した60検体の内、特定55種類の遺伝子に異常が認められなかった52症例、新たに追加収集した52症例についてエクソーム解析を進め、成人白質脳症の全体像を明らかにしていきたいと考えている。 これまでに112症例のエキソーム解析を施行し、8症例に対して疾患原因遺伝子を同定することができた。引き続き、未同定の95症例に対する原因解明に努めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究で収集した60検体の内、特定55種類の遺伝子に異常が認められなかった52症例、新たに追加収集した52症例についてエクソーム解析を進め、成人白質脳症の全体像を明らかにしていきたいと考えている。 スクリーニング解析陰性の52症例においてエクソーム解析を行った結果、1症例においてL2HGDHホモ接合性変異を同定した。顕著な脳室拡大・脳萎縮を伴い、白質ジストロフィーが疑われた実際の症例であり、我々が選択した55遺伝子以外の遺伝子変異であった。L2HGDH遺伝子異常の症候は多彩であるため、表現型として「白質脳症」が必ずしも前景に立つわけではないが、主治医が白質脳症に着目したことから、我々の解析手法、臨床・画像分類からの遺伝子同定ストラテジーを用いることにつながり、診断へ結びついた例である。また、新たに収集した52症例に対しエクソーム解析を行った結果、これまでに6例でNOTCH3 新規変異、1例でTUBB4A新規変異を検出するに至っている。合計112症例のエキソーム解析を終え、8症例に対して疾患原因遺伝子を同定することができた。引き続き未同定の95症例に対する原因解明に努めていく。
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今後の研究の推進方策 |
112症例のエキソーム解析を施行し、8症例に対して疾患原因遺伝子を同定することができた。引き続き、未同定の95症例に対する原因解明に努めていく。常にアップデートされた文献内容を把握し、既知遺伝子における新規変異の病的意義の検討を行う。
新規原因遺伝子検索に際しては、エクソーム解析で得られる膨大な変異情報の中から、疾患に非特異的な変異を除去することが重要であり、当施設においてはすでに蓄積してある500例以上の日本人正常コントロール、dbSNP、The Exome Aggregation Consortium (ExAC) のエクソームデータを利用し疾患非特異的な変異を効率よく除去するプログラムを有すため使用し、公共データベースであるSIFT、PolyPhen-2、Mutation Tasterのスコアに基づき病的意義を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
エクソーム解析の検体数が予定数より少なかったため、来年度は追加検体のエクソームキャプチャー試薬代、エクソームシーケンス解析代として助成金を使用する予定である。
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