白質脳症は大脳白質を病変の主座とする疾患の総称である。原因疾患は多岐にわたり、遺伝性も含め全く病態の異なる疾患が混在する。申請者らは、55種類の白質脳症原因遺伝子を対象に、カスタムキャプチャーキット(CDGP)を作成し、卓上型次世代シーケンサーを用いた新たな白質脳症の診断方法を開発し、解析手法を確立してきた炎症性疾患、腫瘍性疾患、動脈硬化性多発脳梗塞など、原因が確定した症例を除外した成人白質脳症症例60例の解析の結果、成人白質脳症の13.3%について我々の方法で遺伝的背景を明らかにすることが出来ることを示したしていた。 本研究では上記の先行研究を通じて収集した白質脳症のうち、異常が検出されなかった症例および新たに収集した症例、合計100例に対してはエクソーム解析(WES)を施行し、成人白質脳症の遺伝的背景の解明を目指した。また、本研究施行中に、NOTCH2NLCのGGCリピート伸長が神経核内封入体病(NIID)の原因として同定されたことから、収集検体に対しGGCリピート伸長の解析を行った。 結果、CDGPによる検討で異常が検出されなかった52例のうちの51例と新規に収集した50例の成人白質脳症計101例ついてWESとNOTCH2NLCのGGCリピート伸長の検索を行い、12例でGGCリピート伸長を同定した。この最新の解析を合わせると、成人白質脳症患者においても110例のうち28例(25.5%)と比較的高率に原因遺伝子が判明し、その内12例がNIID、11例がCADASILであり、NIIDとCADASILが成人白質脳症の2大疾患であることを明らかにした。
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