研究課題/領域番号 |
18K15461
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
建部 陽嗣 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00637027)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオマーカー / p-tau / tau / NFL / TDP-43 |
研究実績の概要 |
超高感度デジタルアッセイ技術であるSimoa(Single molecular array; 米国Quanterix社)を導入し,世界で初めて,ヒトの血液中でアルツハイマー病(AD)コア・バイオマーカーの1つであるp-tau(リン酸化タウ蛋白)をfg/mLのオーダー(従来のELISA法の1000倍の感度)で検出できる定量系を開発してきた。 本年度は、p-tauに加えて、ADの他のコアバイオマーカーである、t-Tau(タウ蛋白)、NF-L(ニューロフィラメント軽鎖)に関して多施設のサンプル測定を行った。その結果、全ての物質をSimoaにて安定して測定できることを確認した。また、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の残存運動神経内に蓄積するTDP-43の測定系の開発にも成功した。 そこで、ALS患者の髄液および血漿のNF-L、t-tau、TDP-43をSimoaを用いて測定した。すると、ALS患者のCSF中のNF-L、血漿中のNF-L、およびCSF中のTDP-43の量が、対照群と比較して増加していることをつきとめた。髄液およびと血漿NF-Lは、ALSの診断バイオマーカーとして役立つだけでなく、疾患進行のマーカーになる可能性が示唆され、CSF中のTDP-43はALSの診断バイオマーカーとしても有用であることがわかった。また、CSF中のNfLとTDP-43の値を併用すると、ALSの診断に有用なバイオマーカーになる可能性が示唆された。 また、血液透析を受けている患者の血液中のt-tauを測定すると、血液透析を受けたかどうかに関係なく腎不全の患者でより高く、タウの分解と排泄への腎臓の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、Simoaによるp-tau測定に関して、多施設のサンプル測定を行っている最中であり、おおむね良好な結果を得ている。より安定して測定できるよう改善をおこなっている最中である。 加えて、Simoa測定系を用いて、他のバイオマーカー候補であるNF-L、total-Tau、TDP-43といった物質に関しても安定して測定できるようになってきており、今後も継続して検討をおこなっていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
より多くのサンプルでの血漿p-tau測定を実施し、改良をおこなうことで、より安定性、再現性の高い測定系の確立を目指す。 また、バイオマーカーの候補となり得る他の物質の測定系の作成も行い、より認知症・神経変性疾患に対して感度・特異度の高い血液バイオマーカーの探索をおこなっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品に関して、以前に研究室で購入してあったものを用いて研究をおこなったため本年度の支出が低くなっている。 繰り越した費用は、次年度、予定医通りの研究を遂行するにあたり、消耗品、試薬、血液サンプルを購入する費用に充てる。
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