超高感度デジタルアッセイ技術であるSimoa(Single molecular array; 米国Quanterix社)を導入し,世界で初めて,ヒトの血液中でアルツハイマー病(AD)コア・バイオマーカーの1つであるp-tau(リン酸化タウ蛋白)をfg/mLのオーダー(従来のELISA法の1000倍の感度)で検出できる定量系を開発してきた。 p-tauに加えて、ADの他のコア・バイオマーカーである、Aβ40、Aβ42、t-Tau(タウ蛋白)、NF-L(ニューロフィラメント軽鎖)に関して多施設の血液・髄液サンプル測定を行った。その結果、全ての物質をSimoaにて安定して測定できることを確認した。血液透析を受けている患者の血中t-tauを測定すると、血液透析を受けたかどうかに関係なく腎不全の患者でより高く、タウの分解と排泄への腎臓の関与が示唆された。ダウン症(DS)患者は加齢とともにADを発症するリスクが高くなる。DS患者の血液でコア・バイオマーカーを測定すると、血中NF-L濃度の値が認知機能を予測する客観的なマーカーになる可能性がわかった。他にも、AD以外の認知症として、ヘルペス脳炎患者の体液バイオマーカーの測定も行い、髄液中のp-tau濃度が有意に上昇することを確認した。 これまで使用してきたp-tau測定系は、市販のkitを改良したものである。しかし、市販kitの仕様が変更されたため、これまで通りの測定が困難になった。そのため、完全オリジナルなp-tau測定系の作成に着手している。新たに作成した測定系では、AD血液で有意にp-tau濃度が高値となることを確認した。現在、タウPET脳画像との相関を検討しているところである。 また、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の残存運動神経内に蓄積するTDP-43の独自の測定系の開発にも成功し、血液・髄液サンプルでの検討を始めている。
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