研究課題/領域番号 |
18K15463
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
石川 景一 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (90733973)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / iPS細胞 / 細胞老化 / ドーパミン神経細胞 / アルファシヌクレイン |
研究実績の概要 |
パーキンソン病は加齢により発症率が上昇することから、加齢がパーキンソン病発症の大きな要因の一つと考えられているが、その病態機序は不明である。本研究では遺伝性パーキンソン病患者由来iPS細胞および孤発性パーキンソン病患者由来iPS細胞をドパミン神経細胞に分化誘導したパーキンソン病モデルドパミン神経細胞と、独自に見いだした老化促進剤を用いることによる老化モデルを組み合わせて、パーキンソン病の病態を再現することで、パーキンソン病発症における患者ドパミン神経細胞での老化の関与とそのメカニズムを解明することを目的とする。本研究を完遂することで、パーキンソン病の発症機序の一端を明らかにし、さらには新たなパーキンソン病治療ターゲットを示すことができる可能性がある。 既に樹立済みの複数の遺伝性パーキンソン病患者iPS細胞からドパミン神経細胞を誘導し、老化促進剤による異常表現型の違いを検討した。その結果、PARK4遺伝子異常(αシヌクレインのduplication)をもつドパミン神経細胞内において、これまでは長期間の培養を行っても再現が困難であったαシヌクレインの細胞質内凝集を、短期間の培養で確認することができた。反対の作用を示すと思われるSIRT1活性化については、培地内のNAD+の調整が必要であるが培地作製の問題から実現できなかった。 また、孤発性パーキンソン病iPS細胞については、まず4例の孤発性パーキンソン病患者由来ドーパミン神経細胞において、老化促進剤なしでミトコンドリア異常を来すことを見いだすことができた。今後検体数を増やし、老化促進剤による変化を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝性パーキンソン病患者iPS細胞由来ドパミン神経細胞における老化促進剤の効果を評価し、PARK4患者由来ドパミン神経細胞においてこれまで再現が困難であったαシヌクレインの細胞質内凝集を、老化促進剤により短期間の培養で確認することができた。老化抑制作用を示すことが期待されたSIRT1活性化は技術的な問題で結果的に評価が困難であったが、2018年度に予定していた遺伝性パーキンソン病患者由来ドパミン神経における老化促進剤による表現型の変化を評価し、ポジティブな結果を得ることができたことから、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝性パーキンソン病患者由来ドパミン神経細胞における老化促進剤の影響の評価を終えたため、今後予定通り孤発性パーキンソン病患者由来ドーパミン神経細胞における老化促進剤による効果を検討する。並行して老化促進機序の解明も検討するが、iPS細胞由来神経細胞のみでの検討ではサンプル調整などが困難なところもあり、老化促進メカニズム解明については線維芽細胞や培養細胞の使用も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では、2018年度に数例の遺伝性パーキンソン病患者由来ドパミン神経細胞を用いた評価を行い、その結果を基に2019年度には多数例の孤発性パーキンソン病患者由来ドパミン神経細胞を用いた評価を行う予定としている。その為2019年度は2018年度に比べて扱う検体数が多く費用がかかるため、次年度使用額が生じている。また2019年度には国際学会での発表も予定しており、そのための費用も必要である。
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