研究課題/領域番号 |
18K15468
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
坊野 恵子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20753320)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / エンドソーム / レトロマー |
研究実績の概要 |
初年度の研究期間中に以下の研究を行った。 1)健常群,疾患群として,健常由来iPS細胞およびPARK17患者由来iPS細胞からそれぞれ2症例,計3lineよりCiRAの標準的なプロトコルを用いてドパミンニューロンを分化誘導した.培養皿に展開し約14日間培養後に固定,免疫染色しニューロンマーカーMAP2陽性細胞におけるドパミンニューロンマーカーTH陽性率を測定したところ,疾患群で優位にドパミンニューロンの陽性率は低下していた.疾患群では優位にアポトーシスが誘導されているのではないかと想定し,アポトーシスのマーカーcleaved caspase-3(以下CC3)陽性率を測定したところ,疾患群で優位にCC3陽性ドパミンニューロンの%は上昇していた.このことから疾患群のドパミンニューロンではアポトーシスが誘導されやすい傾向にあると明らかになった. 2)レトロマーはエンドソーム上でRab5やRab7と共に働き小胞を分離する役割を担うことが明らかになっている(Abubakar 2017).エンドソームに関わる各種細胞内小器官のうちlate endosomeのマーカーであるRab7aのライブイメージングをiPS細胞由来ニューロン(以下iNeuron)で行った.iNeuron上でRab7a-RFPを発現させ1分間観察したところ,neurite上をRab7aの小胞が細胞体から両方向に移動する様子が観察され,疾患iNeuronでは健常群に比しRab7aの最高および平均移動速度が低下していた. 上記結果よりPARK17患者由来iNeuronではドパミンニューロンの脆弱性を裏付ける結果が示された.またVPS35遺伝子変異によりレトロマーの機能障害が生じ,エンドソームリソソーム系の機能に影響を及ぼしている可能性が示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患および健常iPS細胞由来ドパミンニューロンも安定して分化誘導,培養できる手法を獲得し,アポトーシスの評価,細胞内小器官のライブイメージングなどを順調に実施できている.iPS細胞の各lineの神経分化誘導に時間がかかるためにひとつひとつの実験に時間を要しているが, 概ね順調に進展しておりこのまま当初の研究計画を残りの年次で進める.
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き以下の研究計画を実施する予定である. 1)疾患および健常iPS細胞から分化誘導したドパミンニューロンを用い,エンドソームリソソーム系の機能評価として各種細胞内小器官マーカーを用いたライブイメージングを継続して行い,レトロマーの機能評価やエンドソーム系への影響について病態評価してゆく. 2)疾患由来iNeuronでパーキンソン病の病因タンパク質であるαシヌクレインおよびリン酸化αシヌクレインの蓄積が亢進しているか,免疫染色やWestern blottingで評価する.最終的にはレトロマー機能障害モデルにおけるαシヌクレイン凝集過程の調査を目標としており,疾患群ニューロンで細胞内にαシヌクレイン凝集が亢進しているか,可能な限りライブイメージングの系で可視化しその過程も調査する.観察に至適なαシヌクレインプローブを作成し,HeLa細胞を用いてライブイメージングに適したプローブの種類,培養および観察条件を選定する.条件選定後に健常,疾患,両群由来iNeuronを培養し,αシヌクレインの凝集過程をイメージングする. 3)上記2)の研究計画で疾患群においてドパミンニューロン内のαシヌクレイン凝集亢進が示唆される結果が得られた場合には,パーキンソン病の治療戦略として疾患群においてレトロマー機能を安定化させるin vitroの実験系を選定し,疾患群での異常が是正されるか検証する.レトロマー安定化の方法として正常VPS35(WT)強制発現や,遺伝子変異改変等の手法を候補とし最適な実験系を選定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に産前産後および育児休暇を計8ヶ月取得したため,研究計画がずれており,その分次年度使用が生じている.当初の予定どおりの研究計画を今後も進め,主に培養試薬や抗体などの物品費に使用する予定である.
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