研究課題/領域番号 |
18K15468
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
坊野 恵子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20753320)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / VPS35 / レトロマー / オートファジー |
研究実績の概要 |
パーキンソン病を始めとする病因タンパク質の異常蓄積により発症する疾患ではタンパク質の細胞内クリアランスが重要である. 申請者はVPS35 D620N変異(家族性パーキンソン病;PARK17)ヒト患者由来iPS細胞を樹立,ドパミンニューロンに分化誘導し解析を行ってきた. VPS35はエンドソーム輸送に関わるタンパク複合体レトロマーを構成する因子で,エンドソーム膜上に局在しエンドソーム小胞の輸送や分離を制御している.前年度までの研究結果からVPS35変異は初期および後期エンドソーム小胞の輸送,分離,融合を阻害し,パーキンソン病の病因タンパク質であるα-synucleinの細胞内蓄積を亢進させている可能性が示唆された. 上記研究の解析過程で本年度はVPS35がRab9の細胞内輸送に関与する点に着目した.Rab9はゴルジ体が起源となる新規オートファジーの開始分子である.VPS35変異によりRab9輸送障害が生じる結果,オートファジーが障害されると仮説を立てた.過去より数々の遺伝学的研究からパーキンソン病とオートファジーの関連が示唆されているが,オートファジーを標的とした治療薬開発は実現しておらず課題を残している.本年度の研究成果として,VPS35 D620N変異により新規オートファジー障害が生じることを疾患iPS細胞由来ニューロン及びCell line,複数の実験系で確認した.近年パーキンソン病発症・進行の抑制効果があると報告されているホルモン;エストロゲン投与によりその障害は是正され,疾患由来ドパミンニューロンの生存率が改善した.上記結果から新規オートファジーもパーキンソン病の病態において重要な役割を担っている可能性が示唆される.上記は本研究で疾患由来ニューロンを解析する過程で病態に関わる重要な課題と考え計画を追加・修正し進めており,残りの研究期間で成果をまとめ報告したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたとおり,本研究を進める過程でパーキンソン病の病態において重要と思われる実験計画を追加・修正したためにiPS細胞培養,ニューロンへの分化誘導,解析にやや遅れが生じている.次年度の残りの研究期間内に成果をまとめ報告する.
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施したiPS細胞由来ニューロンの解析を継続,完了させ,最終報告する.
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次年度使用額が生じた理由 |
前述した通り,研究を進める過程で病態に関与し重要と思われる計画の追加・修正によりiPS細胞培養,ドパミンニューロンへの分化誘導,解析に少し遅れが生じた.次年度に残りの研究計画におけるiPS細胞関連の培養及び解析の諸費に用いる.
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