研究課題/領域番号 |
18K15470
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 卓治 愛知医科大学, 医学部, 特別研究助教 (30794151)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 球脊髄性筋萎縮症(SBMA) / iPS細胞 / 運動ニューロン / 骨格筋 / 神経筋接合部(NMJ) / ゲノム編集 / タイムラプスイメージング / オプトジェネティクス |
研究実績の概要 |
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)疾患特異的iPS細胞を用いた神経・筋病態の解明を行うためのシステム開発を行った。 (1)ヒトiPS細胞由来骨格筋を用いた神経・筋共培養システムの確立:神経筋接合部(NMJ)を可視化するレポーターを作成し、NMJ形成を可視化・定量化することに成功した。さらに、薬剤誘導性MyoD1の発現により、ヒトiPS細胞から短時間で高効率に骨格筋細胞を安定的に誘導する培養法を確立した。この方法を用いて分化誘導したiPS細胞由来骨格筋にレンチウイルスを用いてNMJレポーターを導入し、レポーターで可視化したヒトiPS細胞由来運動ニューロンと共培養したところ、NMJ形成を経時的に捉えることに成功した。さらにこのレポーターを応用して、NMJの形成を相加的に促進させる因子(NMJ形成促進因子)を同定した。 (2)SBMA骨格筋モデルとiPS細胞由来運動ニューロンの共培養による病態再現:変異ARを導入したSBMA骨格筋モデルにおいて、細胞死を伴わない筋管の形成不全(分化成熟不全)が観察された。この変異AR発現骨格筋と健常者iPS細胞由来運動ニューロンを共培養したところ、変異ARのCAGリピート(ポリグルタミン鎖)の長さに依存してNMJ形成不全と運動ニューロンの細胞死が誘導されることを見出した。 (3)CRISPR/Cas9によるSBMA疾患特異的iPS細胞の伸長CAGリピートの正常化:SBMA疾患特異的iPS細胞における変異ARの異常伸長CAGリピートをゲノム編集で正常化し、遺伝的バックグランドが同一の(isogenic)コントロールiPS細胞を作製した。 (4)オプトジェネティクスと多電極アレイによるNMJ機能解析システムの構築:光感受性チャネルロドプシンを導入した運動ニューロンと骨格筋の共培養を多電極アレイ上で行い、運動ニューロン刺激により誘発される骨格筋の活動電位を記録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞から骨格筋への分化誘導法を確立し、iPS細胞由来運動ニューロンと共培養することにより、神経筋接合部の形成をリアルタイムに可視化できた。また、SBMA患者及び健常者由来iPS細胞から分化誘導した運動ニューロンと骨格筋を共培養し病態解析を進めており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
SBMA患者及び健常者由来iPS細胞から分化誘導した運動ニューロンと骨格筋を共培養し、病態解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な研究費の使用により、次年度使用額が生じた。翌年度分と合わせて、実験試薬や実験器具等の消耗品の購入等にあてる予定である。
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