研究課題
臨床研究Perry症候群(Perry病)はパーキンソニズム、うつ・アパシー、原因不明の体重減少、中枢性呼吸障害をきたす常染色体優性遺伝の神経変性疾患である。Perry症候群はDCTN1遺伝子が原因遺伝子で、病理学的には筋萎縮性側索硬化症などと同様にTAR DNA-binding protein 43 (TDP-43) プロテイノパチーに分類される。我々は、国際共同研究によりPerry症候群の国際診断基準を作成し、Perry症候群からPerry病への名称変更を提唱した。また、L-dopaやドパミンアゴニスト投与後に衝動制御障害がみられることなどParkinson病との類似性についても報告してきた。本邦においては、5家系(福岡1、福岡4、大牟田、宮崎、北海道)が発見されている。我々は、未発表の宮崎、北海道家系の臨床データを解析し、2家系の新規遺伝子変異を明らかにした。また、1症例では、過去の我々の報告と同様にL-dopaやドパミンアゴニスト投与後に衝動制御障害がみられた。本邦のPerry症候群10症例でMIBG心筋シンチグラフィーが施行され、8症例 (80%) で取り込みが低下し、便秘や排尿障害、起立性低血圧などが合併していた。Perry症候群では高頻度にMIBG心筋シンチグラフィー取り込み低下を認め、同疾患の自律神経障害の生物学的マーカーになりうることを明らかにした。基礎研究我々は、大牟田家系患者(p.F52L)のiPS細胞を樹立し、TH陽性細胞に分化誘導し、Perry症候群剖検脳でみられるダイナクチンの凝集体の再現に成功したが、TDP-43病理の再現に至らなかった。培養細胞およびiPS細胞由来の神経細胞を用い、ダイナクチンとTDP-43の相互作用などについて解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
臨床研究においては、未発表の宮崎家系、北海道家系の臨床症状やMIBG心筋シンチグラフィー取り込み低下について論文化を行うことができた。また、Perry症候群(Perry病)の臨床症状についてのレビュー論文も作成した。基礎研究においては、培養細胞およびiPS細胞由来の神経細胞を用い、ダイナクチンとTDP-43の相互作用などについて解析を行い、投稿準備を行っている。
臨床研究においては、本邦の5家系の更なる家系調査を行う。基礎研究においては、ダイナクチンとTDP-43の相互作用について論文化を目指す。
本年度は、臨床研究に重点を置き、論文化に至った。次年度は基礎研究に重点を置き、試薬等の費用にあてるため。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Movement Disorders
巻: 14 ページ: 1, 9
10.1242/dev.172106
Parkinsonism & Related Disorders
巻: 83 ページ: 49, 53
10.1016/j.parkreldis.2020.12.017. Epub 2021 Jan 12