2018年度はビッグデータ解析に必要な高速演算環境の整備と、機械学習によるマウス性周期判定技術の開発を行った。 まず、約3300枚の雌マウスの膣スメア画像から細胞診を行うコンピュータプログラムを開発した。それらの画像は膣分泌液に浮遊する上皮細胞や白血球などを光学顕微鏡で撮影したものである。通常は研究者が細胞の種類や比率を目視し、性周期のphaseを判定することで自らの実験に役立てるが、その判定精度向上には熟練を要するため、高精度で自動判定するプログラムの開発は、実験動物を用いる全ての研究者にとって利益となることが期待される。約3300枚の各画像が示す性周期のphase情報を、あらかじめ熟練研究者が判定し、画像データとは別の「正答」データとした。そのうち約2000枚を訓練画像としてPythonベースの畳み込みニューラルネットワークプログラムに投入、性周期のphaseを判定させ、より高精度で正答にたどり着く"読影法"を学習させた。 訓練に用いていない残りの画像から、約500枚の評価用画像、約750枚のテスト用画像を分離した。評価用画像およびテスト用画像の示す性周期phaseをプログラムに判定させたところ、各phaseで90%前後の判定制度を得た。テスト用画像を、マウスの性周期判定を日常的に行っている熟練研究者と非熟練研究者にも判定してもらい、プログラムの判定精度と比較したところ、プログラムは熟練研究者に並ぶ高精度での判定ができることがわかった。 この成果をとりまとめ、英文学術雑誌に投稿の準備中である。
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