研究課題/領域番号 |
18K15478
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 直大 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40797122)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 薬物療法 / 多剤大量投与 / 脳機能 / MRI |
研究実績の概要 |
統合失調症患者における抗精神病薬の多剤大量投与は、患者の身体機能および精神機能の低下をきたすのみならず、医療経済学的な負担も大きい。近年、精神科臨床の場において、多剤大量投与の減薬の取り組みがなされており、精神症状の改善や脳機能の改善をもたらすことが期待されているが、その科学的根拠は乏しい。本研究では、統合失調症患者よりMRI撮像(安静時脳機能画像)を取得し、減薬により患者の脳機能の変化や臨床症状改善との関連を探索することを目的としている。初年度である平成30年度は、被験者リクルート及びTime 1のデータ取得を開始し、既存研究でのデータと合わせて、計40例の統合失調症患者のMRI撮像(安静時脳機能画像)を収集した。また、安静時脳機能画像の画像解析法の検討を行い、汎用ソフトウェアであるDPARSFを用いる解析を候補とした。まずは予備的解析として、統合失調症患者における、多剤大量投与の有無による脳機能的接続の差異を探索した。主解析の前に、DPARSFを用いて、安静時脳機能画像より脳機能的接続の全脳マトリックスデータを抽出した。主解析としては、具体的には、統合失調症患者29例を対象として、全脳の機能的結合と抗精神病薬服薬量との相関を調査した。なお、年齢、性別、機能の全体的評定(GAF)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)のサブスケール(陽性症状、陰性症状、総合精神病理)で調整することにより、精神症状や社会機能とは無関係に抗精神病薬の服薬量が影響を与える脳機能的接続を探索した。結果としては、左内側眼窩前頭皮質と小脳左葉との機能的結合が、抗精神病薬服薬量と負の相関を示した。以上より、抗精神病薬の大量投与が脳機能的接続の低下を生じうることが示され、精神機能や社会機能にも悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成30年度は、被験者リクルート及びTime 1のデータ取得を開始し、既存研究でのデータと合わせて、計40例の統合失調症患者のMRI撮像(安静時脳機能画像)を収集した。したがって、被験者リクルートとTime 1のデータ取得は順調に進んでいると考えている。また、安静時脳機能画像解析に関する発表を国際学会にておこない、学会における議論や情報交換により、その後本研究の画像解析法に関して検討した結果、汎用ソフトウェアであるDPARSFを用いる解析を候補とした。まずは予備的解析として、統合失調症患者における、多剤大量投与の有無による脳機能的接続の差異を探索した。主解析の前に、DPARSFを用いて、安静時脳機能画像より脳機能的接続の全脳マトリックスデータを抽出した。主解析としては、具体的には、統合失調症患者29例を対象として、全脳の機能的結合と抗精神病薬服薬量との相関を調査した。なお、年齢、性別、機能の全体的評定(GAF)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)のサブスケール(陽性症状、陰性症状、総合精神病理)で調整することにより、精神症状や社会機能とは無関係に抗精神病薬の服薬量が影響を与える脳機能的接続を探索した。結果としては、左内側眼窩前頭皮質と小脳左葉との機能的結合が、抗精神病薬服薬量と負の相関を示した。一方、縦断研究に同意してくださる被験者が見つからなかったため、まだTime 2の撮像を開始することができていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き平成31年度は、健常者と統合失調症患者の被験者リクルートとTime 1のデータ取得を継続する。また、Time 1に参加した被験者を対象として、縦断研究に参加する被験者のリクルートを進め、Time 2のデータ取得も継続する。さらには、予備解析(統合失調症患者における、多剤大量投与の有無による脳機能の差異に関する解析)に関する学会発表を行い、論文作成を開始する。また最終年度である令和2年度には、被験者リクルートとTime 1のデータ取得、Time 2のデータ取得を年度途中まで継続する。本解析(多剤併用・多量投与例における、減薬がもたらす脳機能の変化、および、多剤大量投与例に対する減薬に伴う、臨床症状/全般的機能/生活の質(QOL)の変化と脳機能の変化との関連解析)を開始し、国際英文誌への投稿を目指し論文を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に旅費と人件費・謝金に関して、次年度使用額が生じた。次年度は、論文投稿前には批判的意見を募るため、また出版後であれば研究成果告知のために、国内外の精神医学あるいは脳神経科学に関連する学会への参加を予定している。また、研究協力者の協力に対する謝意として、交通費・謝金が必要であり、MRI撮影補助や被験者の臨床評価・質問紙取得に、心理臨床または実験心理研究の経験のある学術支援専門職員の雇用を要することが想定されるため、こうした目的で使用する予定である。
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