研究課題
デノボ変異探索のため、両親と発端者の3名からなるトリオ(ないし同胞を含めた4名のカルテット)のエクソームシーケンスデータを準備した。双極性障害171トリオ・統合失調症1,726トリオに加え、自閉症トリオ・カルテット(計9044名)のデノボ変異を網羅的に解析した。双極性障害・統合失調症については、サンプルサイズの小ささを補うため2種類のリファレンスゲノム(GRCh37, GRCh38)を使用し、検出感度を高めた。一塩基置換や短い欠失・挿入はTrioDenovo/DNMFilterを用いて検出し、転移因子はMELTにて検出した。本研究は、ヒトゲノム上転移因子のデノボ転移による精神疾患への寄与を明らかにするために開始されたが、計画開始後に、自閉症や重度発達障害をはじめとして、転移因子のデノボ転移の網羅的な報告が複数なされた (Brandler et al. Science 2018; Werling et al. Nature Genetics 2018; Gardner et al. Nature Communications 2019)。本計画でも自閉症発端者にデノボ転移因子を複数検出したが、双極性障害・統合失調症ではデノボ転移が確認されず、既報により報告の新規性が失われた。精神疾患の背景因子を探るという大枠の意義や論文報告の価値を踏まえ、上記の先天的なデノボ変異に加え、発生発達の過程で生じる後天的なデノボ変異、および転移因子と同様に別な生物由来のゲノム要素であるミトコンドリアをデノボ変異探索の主要な標的とした。後天的デノボ変異として、双極性障害では既知の発達障害原因遺伝子上のモザイク状変異が多いことを見出し、中でもSRCAP遺伝子に独立した2名から機能障害変異が検出された (Nishioka et al. Nature Communications in press)。ミトコンドリアゲノムについても、双極性障害・統合失調症から既知のミトコンドリア病原因変異を含めデノボ変異・モザイク変異が検出され、疾患横断的に精神症状発症と関連すると考えられた (Nishioka et al. in preparation)。
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Nature Communications
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