研究実績の概要 |
社会性障害を示し、社会参加に困難がある自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, ASD)は、男性に高い有病率(男性1.8%,女性0.2%)を示す発達障害である(土屋, 2012)。ASDの脳病態基盤は不明のほか“ASD男女差の原因”の究明やこの診断に繋がる生物学的指標(バイオマーカー)の同定まできていない。そこで本申請課題では、“ASDの男女差の原因” を神経科学的に明らかにすることからASDの脳病態基盤を探求するため、男女のASD群と定型発達群において安静時機能的MRI (resting state functional MRI, rs-fMRI) を用いて検証した。近年、人工知能(AI)技術を用いた発達障害に対する新たな脳画像診断法、治療法の開発と応用は必要性が指摘されている。特にASD (自閉スペクトラム症) 男児86名, ADHD(注意欠如・多動症)男児83名の診断や治療方法においてカテゴリー的方法から新たな視点・客観的なバイオマーカーが必要であることを示唆している。そこで、本研究は7~15歳のASD男児86名, ADHD男児83名と、年齢、IQ(知能指数)がマッチした定型発達男児125名を対象に安静時機能的MRI (resting-state functional connectivity MRI: rs-fcMRI)のデータを採取し、「サポート・ベクター・マシン」という機械学習の技法で解析を行った。その結果、定型発達とASDは76.3%、定型発達とADHDは84.1%、ASDとADHDは79.3%で区別できる脳領域を特定した。特定された脳領域間の機能的連結が弱く、その機能的連結の強さはASD特性と関連していることが認められた。本成果を基に、人工知能と安静時脳活動パターンがASDとADHD診断の客観的なバイオマーカーになる可能性が示唆された。
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