研究課題
本研究では腸内細菌プロファイルがうつ病の発症に影響を与える機序を解明し、うつ病の回復や重症化に関連する腸内細菌プロファイルを同定することを目的としている。平成30年度は腸内細菌とストレスの関連性を調べる前段階として、発症にストレスが関与する精神疾患に関して基礎的な研究を行った。1つは男性統合失調症患者を対象としたY染色体欠失(以下LOY)に関する研究である。一般的に統合失調症患者の平均寿命は健常者と比較しても短く、男性統合失調症患者では女性患者と比較して予後が不良で、抗精神病薬への反応性が乏しいことが知られている。こういった男性特有の病態を解明するために、近年アスペルガー症候群との関連や加齢や自殺者で増加したとの報告があるY染色体欠失との関連について調べることにした。統合失調患者146人、健常者214人の末梢血を用いてLOYについて比較し、LOYの増加はないことを報告した。しかし、年齢と喫煙歴を調整して解析を行うと、罹病期間の長い群では健常者に比べて、優位にLOYが増加するという結果であった(p = 0.007、OR = 1.11 [95%CI = 1.03-1.19])。他にも加齢や心理的ストレス、種々の精神疾患で短縮が報告されているテロメア長に関する研究を行った。我々は統合失調症患者では健常対象者と比較して優位にテロメアが長いことを示した。上記研究を通じて加齢やストレスによる精神疾患や遺伝子レベルでの変化について理解を深めることができ、最新の研究状況を把握できた。これらの知見を元にして、うつ病やストレスと腸内細菌プロファイルの関連を検討し、腸内細菌叢から精神疾患を診断することを目的として研究を進める。現在、医学研究倫理員会にて審査中である。研究デザインや解析方法について教室内で議論を深め、倫理委員会の承認が得られ次第、速やかに症例の収集を開始することとしている。
3: やや遅れている
倫理委員会での審査中であり、症例を集めることができていないが、間も無く承認が得られる予定である。
倫理委員会の承認が得られ次第、当院外来通院中・入院中の患者から同意を得て、今年度中に目標症例数を集めることを目指す。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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