22q11.2欠失症候群は、ヒト第22番染色体長腕11.2の微細欠失を原因とする症候群であり、身体奇形症候群に加え高率に統合失調症症状を呈する。統合失調症症状を呈した同症候群患者の治療においては、統合失調症患者の治療と同様に、神経伝達物質ドパミンに拮抗作用のある抗精神病薬の有効性が確かめられている。有害事象としてパーキンソニズムが問題になるが、その程度には個体差がある。一方で、22q11.2欠失症候群患者の欠失部位には、個人差があることが知られている。本研究では、22q11.2欠失症候群患者の遺伝子変異解析を通して、薬剤性パーキンソニズムにおける個体差発生機構の解明を試みることを目的とする。統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群患者を2名を対象に、欠失部位を中心にコピー数変異解析を行った。また、解離症状のみを呈し、統合失調症症状がみられなかった22q11.2欠失症候群患者1名においても、同様に解析をおこなった。Taqman probe を用いた定量的PCR 法により、CNV 解析をおこなったところ、同じ統合失調症症状を呈する患者でも、その欠失部位に違いがみられた。HIRA、COMT、MED15、CRKL遺伝子については、統合失調症症状の有無に関わらず欠失を認めた。統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群患者のうち1名は、顕著な薬剤性パーキンソニズムを呈していたが、その患者のみGGT2遺伝子の欠失を認めた。本遺伝子の欠失が薬剤性パーキンソニズムの出現に影響を与えた可能性が示唆されたが、サンプル数が少なくさらなるサンプル収集と解析が必要であると考えられた。
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