研究実績の概要 |
今年度は、昨年までに集めたうつ病患者、健常者のデータを用いてT1w/T2w比画像を作成し、うつ病患者の皮質におけるミエリン異常のある領域について解析している。脳領域間の因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価はDynamic Causal Modeling(DCM)を用いた。Human Connectome Projectから健常者100人の安静時機能的MRI画像を用いて3つのうつ病関連ネットワークである側坐核ネットワーク、扁桃体ネットワーク、腹内側前頭前野ネットワークはうつ病の治療に用いられるrTMSの刺激箇所である左右背外側前頭前野(DLPFC)のみだけでなく、左右島、背内側前頭前野(DMPFC)に収束し、rTMSの潜在的な刺激箇所になりえることがわかった。3つのうつ病ネットワークとrTMSの刺激箇所領域における因果関係をDCMで評価し、これらの間の機能的結合は主にrTMS刺激箇所からうつ病ネットワークへの情報の流れで説明できることがわかった。また、DCMを用いることでうつ病患者個々人に最適なrTMSの刺激箇所を特定できる可能性があることを示した。この結果はFrontiers in Psychiatry (Ishida et al.,2020)に掲載された。 また、DCMに対するfMRIの前処理過程の最適化を行うために1)空間的平滑化、2)頭の突発的動きのノイズを除去するスパイクリグレッション、3)長期的な生理的ノイズを除去するディトレンディングの過程のあるなしで作る8つのパイプラインの比較をデフォルトモードネットワークを構成する4つの領域間のD C Mで行った。TRが2.5秒程度のsingle-band fMRIでは空間的平滑化を行う方がよく、TRが0.8秒程度のmultiband fMRIでは空間的平滑化を行わない方が良いことがわかった。この成果は現在査読中である。
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