本研究は、小脳グリア細胞から特異的にOXTRを欠損させた際に、ASD脳と同じスパイン増加やミクログリア増加が起きるかを明らかにすることを目的として研究を推進している。 1)新規時期特異的OXT/OXTR遺伝子発現制御マウスの開発を行った。OXTR発現は胎生中期から始まり生涯に渡って持続するため、発達障害におけるOXT-グリア連関の機能が発生期と病態確立後のどちらに寄与しているかが不明である。そこで、OXT-グリア連関の時期に応じた役割を明らかにすることも目指すため、OXTR遺伝子発現を時期特異的にON/OFFできるマウスの作出を試みている。当初計画で用いる予定だったPIN-dCas9を用いた遺伝子改変マウスでは想定を超える非特異的遺伝子発現変化が生じていることが判明したたため、新たな分子機構としてCas13を用いたノックダウンシステムの開発と評価を行った。Cas13システムがRNAiなどの既存のノックダウンシステムと比較して優れた特異性、ノックダウン効率を示すことをin vitroの実験系により確認し、更にOXTRを効率的にノックダウン可能な実験系を構築、それらを用いて新規遺伝子改変マウスの作成と評価を行った。 2)小脳グリア細胞特異的Cre発現マウスの選定と評価を行った。小脳グリア細胞特異的Cre発現マウスとしていくつかのCre発現マウスを導入、その発現パターンを精査し、Sept4-iCreマウスが小脳グリア細胞に特異的にCreを発現することを確認した。当該マウスは上記の時期特異的発現制御マウスと現在交配を行っており、生まれてくる子マウスを解析に使用する予定である。
|