研究課題
4施設(富山大学、東邦大学、東北大学、および東京大学)で連携して収集した107例の精神病発症危険状態 (at-risk mental state: ARMS) 群および104例の健常対照群のMRIデータを対象に、画像解析ソフトFreeSurfer (ver.5.3) を用いて、大脳皮質下構造の群間比較を行った。ARMS群全体においては、左側優位の側脳室・尾状核・淡蒼球の体積増加と右側坐核の体積減少を認め、精神病性障害への脆弱性を表す所見と考えられた。未服薬のARMS群64例においても同様の所見が得られ、また皮質下諸核の体積値と服薬量との間に有意な相関が得られなかったため、これらの所見は抗精神病薬による交絡だけでは説明されないと考えられた。上記の主要成果をまとめ、Schizophrenia Bulletin誌に原著論文として公表した(Sasabayashi et al., in press)。
1: 当初の計画以上に進展している
多数例のMRI画像の撮像および臨床評価を概ね完了し、主要な成果は国内・国際学会で発表し、更には原著論文として国際誌に公表した。
ARMS群全体における大脳皮質下領域の形態特徴は明らかになったものの、その臨床的意義については未だ不明な点が多い。そのため、大脳皮質下構造と認知・社会機能の評価指標との関連を調べる予定である。その準備段階として、本年度中に4施設間で連携し、機能の全体的評定尺度および統合失調症認知機能簡易評価尺度の臨床データを収集した。また本年度までの研究では、ARMS群における側脳室、側頭辺縁構造(海馬・扁桃体)、および大脳基底核(視床、尾状核、被殻、淡蒼球、側坐核)の形態変化を調べたものの、今後は脳梁や脳幹など他の関心領域についても検討を進めていく予定である。
今年度購入した画像解析用パソコンが想定より安価であったため、次年度繰越金が生じた。今後はより多数例の解析を効率的に進めていくため、次年度以降に更に画像解析ワークステーションを増設することを計画している。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
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